千の風 第9話
四年ぶりにあなたの声を聞いたら
ずっと押さえていた気持ちが一気に溢れだした
私のために涙を流すあなたを見て
口付けがしたくなった
あなたは怒るかもしれないけれど
もう一度あなたに触れたい
この思いはもう抑えられない
千 の 風
「ギェエエエエエエ!!!」
「きゃああ!!」
「ひゃあああ!!」
眠っていたゆやは樹海の鳥の泣き声で目を覚まし
はそのゆやの悲鳴に驚いた
「ゆや…!!驚かさないでよ…!!」
「ご、ごめんなさい!!…って、あれ?」
ゆやは辺りを見回す
さんと話をしていたはずなのに
どうして私は木にもたれかかっているの?
「緊張が切れたのね、よく寝てたよ」
「え!?私寝てたんですか!?」
信じられない
いつ十二神将が現れるか分からないのに!
「(ごめんね、ゆや)」
眠っていたということにショックを受けたゆやを見て は心の中で謝った
「…それにしても狂起きないね〜」
「…まだ起きないんですか?」
「うん、ずっと眠ったまま、たぶん無理をしすぎたんだね…」
そう言っては狂の髪を優しく撫でる
その行動にゆやは心臓が高鳴った
な ん て 優 し い 目 を す る の だ ろ う
本当に狂のことを心配しているのが分かる
狂を護るためにやって来たさん
さんは狂と京四郎にとって朔夜さんよりも大事な存在
あ な た 達 は 一 体 ど う い う 関 係 な の で す か ?
「さん…あの…!!」
カチン カチーン
ゆやが話しかけようとしたそのとき 何かの音が聞こえた
「?何この音…」
一定のリズムで聞こえる音
生き物の声ではない
でも
すぐ近くから聞こえる
「私見てきますね」
そう言ってゆやは立ち上がる
「え、危ないって!!ゆやが行くなら私も…」
「いえ、さんはここにいて下さい」
「狂にとって」
「側にいてほしいのはさんだと思うから」
ゆやはにっこりと笑い
そのまま音のする方へ行ってしまった
後に残されたのは
茫然とするだけ
「…どういう意味?」
『相変わらずニブいね……』
意味が分からず首をかしげるに早矢は溜め息をつく
『それより…これからどうするの?』
「そうね…取りあえず地下氷城まで行かなくちゃいけないわ、十二神将より早く狂の躯をみつけなくちゃ」
『そうだね、先に見つけられると厄介なことになる』
『うん、それに―…」
「きゃああああ!!!」
の言葉を悲鳴が遮る
「ゆや!?」
悲鳴を聞くと同時に走り出した
やっぱり一人で行かせるんじゃなかった…!
はぎりっと唇を噛んだ
誰も死なせない
そのためにここに来たのに…!
「さん!!」
あまり遠くないところにゆやはいた
側には真っ二つに分かれた樹海の住人の死体
そして
狂の持つ長刀と同じ長さの刀を持った
銀髪の髪に金色の瞳の少年
「…男の子?」
樹海には不釣り合いな子供
でも何だろう
この子から樹海独特の匂いがする
「あんたが?」
少年がを見上げながら聞く
その手には剣玉が握られていた
「いかにも私はだけど…」
「幸村からあんたのことも頼まれてる、力になってやってくれってね」
そう言って少年は持っている剣玉をカチンと鳴らした
「俺の名前は猿飛佐助、真田十勇士の一人だ」
「…真田、十勇士」
真田十勇士
幸村の手足となり
真田家を影から支える
十人の戦士
その力は 一人が千人の侍にも匹敵すると言われている
こんな小さな子が真田十勇士?
なんて言うか…
「ねえ…聞いてんの?」
自分ををじっと見たまま動ことしないにサスケは首を傾げる
「……か…」
「か?」
「かわいいーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
そう叫ぶとはがばっとサスケに抱きついた
「な…!?」
「可愛いーー!!こんな弟欲しかったのよね〜!!特にさっきの上目遣い(?)なんて完璧よ!!
それはそうと君、年はいくつ?小ちゃいね〜でもそこがまたいいかな〜!!
幸村の家臣だなんてもったいない…いっそのこと私の弟になってみない?」
いきなり抱きしめられた上に可愛いと連呼されたサスケは顔が真っ赤になる
「は、離せぇ!!」
「嫌v」
「さん…」
『(哀れだ…)』
離れようとするサスケをますます力を込めては抱きしめた
「サスケが来たなら安心ね」
「はぁ!?」
「ちょっと行きたい所があるの、だから私が戻ってくるまでゆやを護っていてくれる?」
「さん!?」
「大丈夫よ、サスケもいるし、それに早矢も側にいさせるから」
「で、でも…」
「早矢がここにいてくれれば私も安心出来るし…何より…」
がピュイっと口を鳴らすと早矢は銀色の光に包まれ
その光が消えたときには
『この姿久しぶりだなぁ』
人間になっていた
銀色の髪に銀色の瞳
見た目はサスケと同じくらいの年齢に見える
「〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
「マジかよ…」
声にならないゆやと冷静に驚くサスケ
二人の反応を見てはにやっと笑う
「早矢を只の鳥と思って甘く見ない方がいいよ?人形になった方が強いもの」
『でもこの姿って疲れるんだよ…?』
「そんなこと気にしないの!私の相棒でしょう?」
『…まあね』
「(何今の間は…)じゃあちょっと行って来るからみんなをよろしくね、何かあったらすぐに知らせて」
『分かってる』
「さん!!」
「心配しなくても大丈夫よ、すぐに戻って来るから…それに…」
はサスケを体から離し
その金色の瞳を覗き込んで 笑った
「サスケもいるものね?」
「…!」
その笑顔が
あまりにも
綺麗で
優しくて
顔が赤くなる
だから
「当たり前だろ、オレを誰だと思ってんの?」
こう言うのが精一杯だった
「頼りにしてる」
その答えを聞いてはふっと笑い
そして
森の奥へと歩いて行った
「すべてを無へ…」
アキラはそう言ってカチンと二本の刀をしまった
後ろには凍っているクビラと彼の操る数体の人形
アキラの技 「夢氷月天」によって最後のトドメをさされた
「…本当の鬼眼の狂は誰も知らないし知られてはいけない…
狂のすべてを知っているのはこの私…ただ一人…そして…狂を斃すも…ね」
「…ブラコンは今も健在なのね」
「うるさいですよ、」
後ろを振り向けば
あきれてこっちを見ているの姿があった
「もしかしてそこで気持ち悪いくらい凍ってるのがクビラ?十二神将のくせに弱いのね」
「彼は頭脳を除けば二流ですからね…昔の狂だったら一瞬で斃せますよ」
「でも仲間なんでしょう?裏切ったなんて『御方』に知られたらマズイんじゃないの?」
「裏切るも何も…私は従うの一言も言った覚えはないですよ」
「うわ〜…それは腹黒いですコト」
はふいっとアキラから視線を逸らす
「?機嫌が悪いようですね…何かあったんですか?」
アキラはそう言ってに近づいた
「寄るなあっ!!!!!!」
は薄紅色の扇をパチッと開いて一気に煽ぐ
ごうっと風が舞い上がり
アキラに襲いかかった
しかし
それをアキラは寸前でかわす
「な、何するんですか!!」
「煩い!!私の半径一メートル以内に近づかないで!!」
「…どうしてです?」
「どうして!?自分の胸に聞いてみたら!?」
そんなことを言われても
自分にはさっぱり心当たりがない
この間四年ぶりに会ったばかりなのに
何か怒らせるようなことしましたっけ…?
あ…もしかして…
「もしかして…キスをしたことで怒ってるんですか?」
アキラの言葉にの体が揺れる
頬が薄く赤色に染まった
図 星 だ
溜め息が 出る
「…言ったでしょう?私は四年間ずっとあなたを思い続けていたと」
アキラはゆっくりとに歩み寄った
は動かない
それをいいことに
の黒く長い髪を一束取る
そして
「…久しぶりにあなたを見て抑えがきかなかったんですよ」
愛しそうに口付けた
「アキラ…」
「確かに私はいろいろと変わったかもしれません、
でもあなたが好きだという気持ちは四年前と変わりませんよ」
じっと私をみつめるアキラ
もしあの青い眼が開いていたら
今 よ り も も っ と ド キ ド キ し そ う
「ただ…この眼であなたの姿を見れないことが残念ですけどね」
そう言ってアキラは苦笑いをした
「……」
「…?」
「…本当にもう何も見えないの?」
はすっと手を伸ばしてアキラの頬に触れた
その行動に驚きながらも
アキラはの手に己のそれを重ねる
ぬくもりが
伝わる
「ええ、でも他の感覚が発達してますから不便はないですよ」
「…そう、アキラが満足してるのならそれでいいわ、後悔してないんでしょう?」
「もちろんです」
「ならいいわ、うん、もう全然気にしてない」
「すごく気にしているように聞こえるのは気のせいですか…?」
「気のせいよ」
お互いに顔を見合わせて
アキラとは笑った
まるで四聖天時代と同じような雰囲気で
「クス、全然変わっていませんね、」
「それを言うならアキラもでしょう?」
「え…?」
「最初は変わったなーと思ったよ?瞳は閉じてるし、背も高くなったし、口調も変わったし、
行動は大胆だし、何より雰囲気が違うなって思ったの」
「……」
「でもね、なんていうのかな…そう、笑い方が変わってない」
「笑い、方ですか?」
「そう、昔と同じように私に笑ってくれたの」
そう言っては笑った
嬉しそうに
嬉しそうに
「だから、全部が変わったわけじゃないわ」
ああ
「ちゃんと昔のアキラの面影が残ってるもの」
もう
「すごく安心したのよ?」
抑えられない
「!?アキ…っ!」
気持が
抑えられなくて
に深く口づけた
「ぅ…ぁ…き…」
口から甘く漏れる吐息
頭が痺れる
「…」
こんなにあなたに酔っている自分がいる
こ ん な に も 愛 し い
こ の 思 い を ど う す れ ば い い ?
唇が離れ
ぎゅっとアキラに抱きしめられた
どうしよう
何も考えられない
頭が働かない
『(!!)』
頭に不思議な声が響いた
「早、矢…?」
『(?十二神将のビカラが現れて、今鬼眼と戦ってる)
「ビカラ?」
『(このままだと鬼眼は負けるよ)』
「!?」
『(間違いなくこのままだと鬼眼は殺される)』
早矢の言ったことを頭で繰り返す
狂が殺される?
夢が よみがえる
血を出して倒れる狂
刀を振り下ろす信長
あの
恐ろしい悪夢が
「……っ!!そんなこと絶対にさせない!」
アキラを突き飛ばして離れる
「?」
「アキラ!狂が危ないの!!」
「え…?」
「私戻らなきゃ…!!」
「!?」
アキラの止める声も聞かず
は 今来た道を戻っていく
残されたのは
茫然とするアキラ
体から
殺気が溢れる
「…やはり早く狂の躯を手に入れなければなりませんね…私の目的のために」
やはり
あなたは
彼が大事なのですね?
でも
「は…狂には絶対渡さない」
誰にも渡さない
私には眼なんて必要ない
この世には見えなくていいものが多すぎるから
後悔なんてしていない
狂と互角に闘える力と
あなたを護るための力を手に入れたから
もしすべてが終わったら
あなたは私の『眼』の代わりになってくれますか?
もうこの思いは抑えられない
もう絶対に離さない
もう誰にも渡さない
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あとがきと書いていい訳
だってアキラが好きなんだもの。