千の風 24話
無事に戻ってきて
それが
私の願い
千 の 風
村正の家から少し離れたところに洞窟がある
これから ここで 村正が狂に真の無明神風流を教える
青龍 朱雀 玄武 白虎の名を持つ四大奥義を身につけるために
これは命懸けの伝承
でも
そうすることでしか
壬生に勝つ見込みがない
「ゆっくりと教えたいのはやまやまですが…あいにく時間がありません…
危険ですが、早い方をとらせてもらいます、今からこの洞窟の中に二人で入り
四大奥義を直にあなたの体に叩きこみます」
「……」
「その結果、ここから生きて出られるか屍となって朽ち果てるか…すべてはあなた次第―…」
村正が 真直ぐに狂を見て言う
その姿は 幾日か前のものとまったく違っていた
金色の髪は腰まで伸び
顔色もよくなり
とても病にかかっている人間には見れない
村正のバカ…
は心の中で毒づく
「精」という術を施したとによって
村正は「しびと」になった
自分の体の痛覚を壊した
「精」という術を施せば
死人になれば
痛覚を壊せば
恐らく
村正の体はもたない
でも
止められない
村正の意志の強さ 固さを
私はよく知っているから
あなたの思いが
よく分かっているから
『村正?』
『…』
村正は縁側に座り
月の光を浴びながら座っていた
その姿が
あまりにも
儚くて
今にも消えてしまいそうで
声をかけずにはいられなかった
『起きていて平気なの?』
『ええ、もう大丈夫ですよ』
話ながら村正の隣に座る
『泣き止んだみたいですね』
『う、私はもう子供じゃないのよ?いつまでも泣いてばかりはいませんー』
『泣きながら私の服を掴んで、中々離してくれなかったのは誰でしょうね?』
『そ、それは…!』
『まだまだ子供ですよ、は』
『うう…』
クスクスと笑う村正
まったくいつまでたっても子供扱いするんだから…!
何か文句を言おうと思って顔を上げた
でも
言えなかった
村正が 私を 強く抱きしめたから
『村、正…?』
『、私は明日、狂に真の無明神風流を伝承します』
腕の力が ますます 強くなった
『そのために自分に精の術を施します』
『え…?』
精の術
それは
人の痛覚を壊す術
つまり
死人になるということ
『何で…!』
『今のこの体では″みずち″すら満足にうてない…
狂に奥義を伝承するには「精」で痛覚を壊すしかないんです』
『でも村正!』
『』
村正が私の顔を上に向けさせる
金色の瞳と 目が合った
『、あなたは』
『何故、狂がここまで強くなろうとしているのか 分からないわけではないでしょう?』
『誰のために強くなろうとしているのか、分からないわけではないでしょう?』
分かってる
そんなこと
狂が
どうして
強くなろうとしているのか
誰のために
強くなろうとしているのか
『っ…分かってる…!』
そんなこと
分かってる
分かり過ぎて
涙が出る
『それじゃあ、村正』
でも
『約束してくれる?』
我侭を言ってもいいですか?
『生きて、帰って来るって』
まだ
『狂と二人で、無事に戻ってきて』
あなた達の
『…ええ、約束します』
ぬくもりを感じていたいから
もう これ以上 大切な人が死ぬのは 見たくないから
「」
名前を呼ばれてはっと顔を上げる
紅い瞳が私を見ていた
「狂…?」
名前を呼んでも狂は何も言わなかった
ゆっくりと
手を伸ばし
私の頬に触れる
そして
指が動き
そのまま唇を静かになぞって
離れた
ただ
それだけ
でも
私にとっては
充分過ぎる会話だった
狂は何も言わず洞窟に入っていく
「」
「村正…気をつけて」
「ええ」
「約束を、忘れないで」
「…分かっていますよ」
私の頭をゆっくりと 撫でて
狂の後に続いて
洞窟に入っていった
「さん…」
「あの二人なら大丈夫よ、ゆや」
「……」
「必ず、生きて帰って来る」
そう 約束したから
「私たちは、二人を信じて待ちましょう?」
無事に戻ってきて
それが
私の願い
大好きなあなた達だからこそ
願わずにはいられないんです
「」
「ほたる?」
「辰伶が戻ってきたよ」
「へー…んで?任務は?」
「失敗したみたい」
「あーやっぱりな」
「夢と同じ?」
「いや、俺の勘」
「何それ…あ、ねえ」
「ん?」
「次は俺が行くから」
「は?」
「俺が狂と村正を殺してくる」
「……」
「を、連れ戻してくる」
「…本気で?」
「うん、だって」
「もう、ここにがいないの、限界だから」
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