千の風 20話


 
  



   会 い た か っ た 





























                        千 の 風 

























 「でよー!!そん時の蘆名のヤローの顔ときたら面白ェのなんの「ボン うるさい」


 
  バシッ



  
  軽快な音が森に響いた

  自分の自慢話をする梵天丸の頭を が扇で思いきり叩いたのだ



  

 「痛ェ−−−−−−!!何すんだ!」

 「うるさいのよ、黙って歩きなさい」

 「おめえ…せっかくこのオレ様が貴重な話を聞かせてやってんのに…」

 「貴重も何もこの話をするの三回目でしょ!」

 「…そうだったか?」

 「そ う で す !」

    



  ああ イライラする

  いつもならこんなことないのに

  気持ちがあせってしょうがない




  そんなの様子を見て 梵天丸ははあっと溜め息をついた





 「おい 

 「…何よ」

 「村正が心配か?」

 「……」




  ボンと四年振りの再会をはたしたことは 素直に嬉しかった

  四年間の溝を埋めるように 色々と話したかった


  でも





  『実はな、おめえの刀を創った刀匠・村正からおめえとを連れてくるよう頼まれたんだよ』

 『え…?』
 
 『……』

 『オレ様もあいつとは昔っからの知り合いでな…どうしてもって言いやがるから断れなかったのよ―…』

  



 『奴ァ今、病魔に冒され…死の床からお前達を呼んでんぜ―…』






  死 の 床 か ら お 前 達 を 呼 ん で ん ぜ ― …






  ボンの言葉が頭の中をぐるぐる回って しばらく離れなかった





 「だってあんな風に聞かされたら…!」

 


  村正が病弱な体の代わりに『サトリ』の力を手に入れたことは知っている

  でも まさかそこまで病が進行しているなんて知らなくて




 「心配するに決まってるじゃない…!」



  私を

  私を 育ててくれた 人 だから




  だから





  お願いです

   
  もう 

  私から
  
  大切な人を


  奪わないでください




  苦しめないで ください















 「大丈夫だ」

 「…え?」


  ボンはそう言って私の頭をポンと叩いた



 「村正はそんなすぐ死ぬような漢じゃねえだろ、それはお前が一番分かってるはずだ」

 「……」

 「お前が信じなくてどうする」

 「……」

 「そうだろ?」

 「…うん」



  まさか ボンにそう言ってもらえるとは思わなかった

 
   

 「…うん そうだね」



  でも




 「ありがとう、ボン」

   



  はそう言って笑った

  それは久しぶりの 笑顔 だったかもしれない



  梵天丸は一瞬驚いた顔をした後

  ニヤッと笑い またの頭をポンと叩いて

  前を歩く狂の元へと歩いていった




 

 『たまにはいいこと言うね、ボンも』

 「早矢ったら…本当のこと言っちゃ可哀想よ?」

 『ああそうか、ごめん』

 「聞こえてんだよ!おめえら!!」






  不安が 少しなくなった 気がした
















 「あの、さん」

 「ん?」

 「村正さんってどんな人なんですか?」


  ゆやは隣を歩いていたに話し掛けた


 「村正?そうだなー…」


  人さし指を顎において しばらく考え込む





 「笑顔がとてつもなく黒く、その笑顔を見たものは体が凍ってしまったように動けなくなる…!
  人の心を読むのがうまくて、他人の心を揺さぶるその姿はまるでそのもの!!!」


 「そ、そんなにすごい人なんですか!?」

 「違うだろー、ゆやちゃん、村正はこーんな顔してやがんだぜぇ?」

 「……」

 「してないっつーの!





  バシッ





  そんな顔の人間がいたら恐いよ というくらい変な顔をした梵天丸の頭を

  は本日二回目の扇をくらわせた




 「〜〜〜〜〜っ!!」

 「つまりね、私も狂も村正も同じ穴のムジナなの」


  うずくまる梵天丸をよそにはゆやに話し掛ける
 


 「え…?」

 「そして、私の大切な人よ」

 「えぇ!?」



  はニッコリと笑って 前を歩く狂の元に走っていった

  ゆやが後ろから何か叫んでいるけど 気にしない 気にしない




 「…村正は大丈夫よね?」

 「…当たり前だろ」

 「うん!」














   


 「あ、見ろよ、あれじゃねーの?村正の家」


  サスケの言葉に全員が前を見る

  
  森を抜け 場所が少し開けた所に 一軒の家がポツンと立っていた



 「ここが…村正さんのいえ―…」


    
  木が風でさざめき

  鳥たちが歌を歌う

  とてものどかな雰囲気


   
  でも



  どこかおかしい



  そう 



  静かすぎる







 「ねえ…」

 「…ああ―…」

 「チッめんどくせぇ」




  まさか こんな所まで 来ているなんて







 「きれいなところね…でも、誰もいる気配が―」

 「ゆや!それ以上近付いちゃだめ!」

 
  ゆやの言葉を遮ってが叫ぶ



  
  ボゴォ





  の声が合図だったかのように 無数の影が現れた  



 「な―!?」



  その動きは速く 真直ぐにゆやに襲いかかってくる



 「ゆや!」

 「きゃあああああ!!」





  ザシュッ





  ゆやの周りに バラバラになった影の集団の死体が音をたてて落ちる



 「え…?」



  咄嗟につむった目を開けてみると



 「さん!?それに狂!梵天丸さん!」



  ゆやを護るようにして立っている三人の姿




 「てめえら…誰の差し金だ?相手が誰だかわかってやってんだろうなあ」

 「……」



  梵天丸の問いに 彼らは答えない

  それどころか影の集団は黙ってたちの周りを高速で動き始める



 「な、なによこの人たち…」




  そのスピード

  その統率力

  ただ者ではない



 「きゃああああああ!!」



  再び襲いかかってくる 影

  逃げ場はない







 「…フン いい度胸だ」

 「…めんどくさいなあ」

 「まあそう言うな、…行くぜ!」




  梵天丸の声を合図に 三人が動き出す




 「あんたら邪魔なのよ!」

 「ハ−ッハハハハ!!」

 「オラオラオラオラオラァ!!」





  は 扇で

  狂は 刀で

  梵天丸は 拳で



  次々と影が倒されていく






 「なんや弱いやないか」


  紅虎が安心したように言う


 「弱い?とんでもないよ、見てごらんよ、彼らのスピード、パワー、連係の動き…
  何ものかは知らないけど間違いなく最高の暗殺者…かなりの手練だそれを証明するいい例が…」




 「ボクらはの言葉がなければ彼らの存在に気付けなかった」

 「あ…」

 「そんな彼ら相手に楽勝に見えるのは…あの三人がただ者じゃないってことさ」


  幸村の頬に 冷たい汗が流れる





  特に 

  扇で闘っていても

  まるで舞を踊っているように見える


  
  長い髪をなびかせ

  扇を手に持つその姿



  
  これが 『舞姫』










  五十人はいたであろう刺客は 三人によって一瞬で倒された

  阿国はそっと近寄り 刺客が被っていた仮面をとる



 「…かろうじて人のようですけれど異形の民…樹海の民に似てますわ…この人たちまさか―…」

 「壬生、一族」


  がぽつりと呟く


 「な、何やて!?」

 「狂、オメ−とうとう本格的に壬生の野郎どもに狙われ始めたんじゃねーのかあ?」

 「いや…違うな」

 「狂の言う通りね、狂を狙うにしては人数が少なすぎる、どちらかと言うとヤツらの狙いは…」

  
  はちらっと村正の家を見る


 「まさか…奴らの狙いは村正かよ!!お前らに会う前に消すつもりか!?」



  ガラ



 「!!」




  中から出てきたのは

  血まみれの刀を持った刺客の一人



 「む…村正さん、もしかしてもう―…!?」





 「あ…ああ…」

 「―え!?」


  刺客の体に無数の傷が現れ そこから血が溢れる



 「ぎゃあああああああああ―!!」


 
  体が崩れ 四肢が バラバラになる

  一体 どうして?



 「なにィ!?」

 「こ、この斬れ方は…゛みずち″!?」

  

  狂と京四郎以外に 無明陣神流を使える人物がいるのだろうか






 「ようやく着いたかい、待ちわびたよ狂…」



  家の中から 静かな声が 響いた

    


 「…人のこと呼び出しといてとんだ言い草だな、なあ村正…」








 「むら、まさ」









 「お帰りなさい、





  村正が 静かに笑った

  いつでも私を支えてくれた

  

  あの優しい笑顔で








  


  

  すごく すごく 会いたかったの

  

  















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