千の風 19話
みんなを護りたい
だからこそ
自分の力に 不安になる
千 の 風
暗い森の中で 火を囲んで座る
狂と幸村は酒を飲んで
ゆやと阿国さんは天然温泉に行っている
紅虎は姿が見えないから
大方 二人の裸でも見に行っているのだろう
サスケは何か考え事をしているようで 木に昇ったまま降りてこない
私達は 今 京都に向かっている
なぜなら アキラが狂の躯と共に京の都に潜伏したという情報が手に入ったから
狂の躯が奪われ 信長が死んだ以上 壬生は必ず動き出す
狂を 殺すために
私を 連れ戻すために
京都に出発する前 樹海での傷を癒すために立ち寄った旅籠の近くに シンダラは現れた
信長が壬生と手を組んで復活しようとしていること
樹海での目的は狂達の実力を計測ることだったこと
死んでしまったバサラ ビカラ以外の十二神将はかりそめの存在であったこと
そして
狂と京四郎の抹殺が決定したことを伝えた
『自分が一番と思う方向に進めば良い、そうすれば自然と未来は変わるさ』
はぎゅっと手を握りしめた
うん 分かってる
私は 私の信じる道を進めばいい
どちらも選ぶと決めたあの時から
私の道は決まったのだから
もう誰も傷つけない
必ず みんなを護る
必ず も助ける
だから もう少し待っていて
「?」
名前を呼ばれて はっと我に返る
幸村が心配そうな顔で私を見ていた
狂も眉間に皺を寄せてこちらを見ている
「どうしたの?大丈夫?気分でも悪い?」
額にのせられた幸村の手が冷たくて気持ちがいい
「ううん…ちょっと考えことをしていただけ」
「本当に?無理してない?」
「大丈夫だってば、それより幸村、私のことよりよりサスケを心配してあげたらどう?」
「サスケ?」
「そう、シンダラが初代猿飛佐助だって分かってから、元気がないよ」
「……!」
「どうして元気がないか、分かっているでしょう?」
十二神将で 「死なずのシンダラ」 という異名を持つ漢は
かつて 猿飛佐助と呼ばれた漢
幸村が もっとも信頼していた漢だった
サスケはたぶん 今の猿飛サスケと昔の猿飛佐助の力の差を気にしている
だから
「今の猿飛佐助は君意外にいないんだよって言ってあげて」
今自分が頼りにしているのは君なんだよって言ってあげて
「幸村の言葉がサスケにとって何よりの力となるわ」
あなたの言葉が 何よりの力となるから
「…まったく にはかなわないなぁ」
「可愛いサスケのことですものv」
幸村が 苦笑いをする
「僕でも気付かないような小さな変化に気付いちゃうんだね」
「そんなことないわ、サスケが分かりやす過ぎるのよ」
そう言ってキミは何ごともなかったかのように笑うけれど
本当にいつも驚かされるんだ
キミの言葉
キミの行動
キミのその澄んだ漆黒の瞳に
そして
どうしようもなくキミに惹かれるんだ
だからね
悪いけど 誰にも渡す気はないよ
「でも、敵は多いんだよねー…」
「敵?」
「ううん、こっちの話vv」
「」
今まで黙っていた狂が口を開く
「何?」
「お前、黄泉平坂で何があった?」
「え…?」
「ああ、それ僕も気になってたんだよね」
「……」
『ス コ シ デ モ ミ ブ ヲ デ タ ラ』
『コ ノ ミ ヲ ク イ チ ギ ッ テ デ テ ク ル ヨ ウ ニ』
はぎりっと歯を噛んだ
「?」
幸村が私の顔を覗き込む
「あの、ね」
すべてを 言ってしまおうか
「うん…?」
「あの、ね、が…」
ピリィ
「え?」
「「!?」」
空気が 震えている
誰かの闘気を 感じる
「何、この感じ…」
誰かが闘っている…?
「…少し様子を見てくるね、はここにいて?…狂さん」
幸村が狂に目配せする
恐らく 一緒に行こうという合図
狂はそれを見て 無言で立ち上がる
「ま、待って、私も行く!」
「お前はここに残れ」
「何で!?もし壬生一族だったら…!」
「」
狂の手が私の顎を捉える
「この間みてぇに動けなくしてやろうか?」
「大人しく待ってまーす」
この間みたいにキスされちゃたまらないわ…!
「何?ちょっと狂さん、に何したの!?」
「クックックッ…教えてやろうか?あのな…」
「お前ら早く行け−−−−−−−−−−−−−!!」
は薄紅色の扇を広げて 扇ぐ
風がごうっという音をたてて狂と幸村を吹き飛ばす
バキバキという音をたてて 木が倒れる
土煙が辺りを舞った
「はーはー、まったくもう…!」
『何、やってるの…?』
銀色の鳥がの肩に止まった
「早矢…どうだった?」
『ぐるっとこの森を一周してみたけど、特に以上はなかったよ』
「そう、ご苦労様」
『うん…ところで何でここだけ木が倒れてるの?』
「気にしちゃダメ」
『…わかった、それより鬼眼達は?』
「何か…さっき誰かの闘気を感じてね、幸村と一緒に見に行っちゃった」
『(飛ばしたの間違いじゃ…)闘気?誰か闘ってるわけ?』
「分かんない…壬生、かな…?」
『まさか、壬生だったら直接達を狙うんじゃない?気配を消してね』
「そう、だよね…」
『…?』
「ねえ、早矢…」
『ん?』
無言の空気
火の音だけが 耳に響く
「私…ちゃんとみんなを護れるかな…?」
『…急にどうしたの』
「だって…」
不安なの
未来を夢で見るだけの力を持つ私が
本当にみんなを護ることができるのか
を助けることができるのか
たまらなく 不安なの
もう自分の道は決まった
もう迷わない
でも
怖いの
もし 護れなかったら と考えると
こ の 力 が 無 意 味 な 力 だ と 思 い 知 ら さ れ そ う で
「不安なんだ」
『……』
『、自分の力に自信を持ちなさい。この力であなたにしか出来ない役割がきっとあるはずです。
それが分からない内から自分の力を意味の無いものだと決めつけてしまうのは早すぎませんか?』
外に出る前に 私に言った彼の言葉が 頭に響く
「むらまさ…」
いつも 私の心の支えになってくれた人
「 会 い た い 」
言葉が 風にのって 消えた
ピリィ
『!?」
「え、また…!?」
微かに感じる 殺気
『鬼眼、みたいだね』
「やっぱり何かあったんだ…!行こう!」
は立ち上がり 走り出す
早矢も肩から舞い上がり の後を追う
『ねえ、』
「なにー!?」
『さっき、未来を夢で見ることしかできないって言ってたけどさ』
「うん…」
『風の力を、忘れてない?』
「え…?」
『僕がいる限り、風はの味方だよ』
『風は、必ずの助けとなる』
『だから、不安がることはないんだよ』
「…うん」
『僕を、信じて』
「うん…!ありがとう、早矢」
「ハ−ハハハ!!!今のおめえの動きなかなかよかったぜ?やっぱ面白ェ漢だな!!」
狂の前に突然現れた漢
右目に眼帯 木刀を手に持ち 背中には「征夷大将軍上等」という文字がある服を着たこの漢
実は 独眼竜政宗
奥羽の猛将 伊達政宗であった
そして 彼の隠された裏の顔は
四聖天 梵天丸―…
四年前 狂と共に戦場を駆けた 死に神の一人でだった
「なあ狂、オレ様と手ェ組まねえか?おめえだったら足手まといにはなんねえだろうからな
オレ様もおめえも目的地は京の都…手ェ貸しあおうじゃねーか?」
「オレは…自分の躯は自分で取り戻す…お前ら四聖天とはもう組む気はねえ」
狂は梵天丸の誘いをキッパリと断った
紅い眼が 強く光る
「―…そうかい、狂、おめえ…」
「―狂!!」
梵天丸の言葉を 誰かの声が遮った
「さん!?」
「あれーってば来ちゃったの?」
視線の先には 息をきらしたの姿
「だ、だって…狂、の、殺気がした、から…何かあったかと、思って 」
顔を上げたの目と梵天丸の目が 合う
腰まである黒い髪
声
姿
そして その漆黒に瞳
見覚えが ある
自分の記憶に残っている 少女
「「 え ?」」
二人の目が 大きく開かれる
「「ああああああああああああああああああ!!」」
二人の叫び声が 森に響いた
みんなを護りたい
だからこそ
自分の力に 不安になる
でも
その不安を忘れてしまうような
久しぶりの再会だった
四年振りの 再会
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