千の風 第15話




  ただ 

  君さえ 

  信じてくれれば

 
  側に いてくれたら

















             


                               千 の 風 






















  紅蓮浄土の住人の攻撃をかわしながら

  ゆや アキラ 十二神将の三人は地下氷城の奥の方まできていた   




  地下氷城―…

  その名の通り氷の城

  美しいけれど 生き物が住むことを許さない神秘の世界

  しかし 進むにつれて 何か得体のしれないモノが近付いている…

  そんな気がするのは気のせいなのだろうか




 「―みなさん…どうやら着いたようですよ…」

  シンダラはそう言って持っていた火を掲げる


 「これが鬼眼の狂の本当の躯…」


  氷で固められた 狂の躯

  四年前と少しも変わらないその姿で

  紅い瞳に暖かさを残して 

  狂はそこにいた

   

 「こ…これが…狂の本当の躯…!!」


  ゆやは息を飲む

 
  悪寒が止まらない

  立っているのがやっと…!

  目の前にいるだけで押し潰される

  なんていう邪悪な気なのだろう

  躯だけでこれだけの邪気を放っているのなら…

  狂が…自分の躯に戻ったとき

  いったいどうなってしまうの?



 「……」


  アキラは黙ったまま 抱いていたをそっと下ろした



 「狂…やっと…会えた―…」



  そう言って氷に手を当て 自分の額をつける

  狂の姿を 懐かしむように





 「…今にも動き出しそうでなんだかキモチ悪いわね…さっさと掘り出しましょう」

 「やーい!ビカラのこわがり〜」

 「バカねっゾクゾクしちゃうvってことよ」


  氷を壊そうと近付いてくるビカラ


 「さ、アジラ、そこどいてっアタシなら一撃でこんな氷…」





  ドスッ




 

  その場にいた全員が動けなかった






  アキラの刀が 

  ビカラを貫く




  静かに 頬笑む アキラ






  
 「きゃあああ、ビカラァ―!!」


   
  真っ赤な血が ドクドクと流れ落ちる

  悲鳴を上げながら アンテラはビカラに駆け寄った




 「ア…アジラァ…!!あんた…なに考えてんの…!?」

 「―少々時間がかかりましたが…まあ よしとしましょう」

 
  アキラはそう言って後ろを振り返った



 「…やはり裏切るのですか…アジラ…」

 「それは違いますね、私は信長に従った覚えはありません、私は自分の目的のため…
  狂の躯を手に入れるためだけにきたのですから、あなた方ははじめから私のコマの一つに
  すぎなかったのですよ、シンダラさん」





 「私の名前は昔からただ一つ」








 「四聖天のアキラ―…」





  この名前は変わらない 昔も今も これからもずっと






  
 「さあ、もう樹海にもあなた方にもあきました…死んで頂きましょうか」


  アキラはスッと双剣を抜く

  それに対して シンダラ アンテラ ビカラの三人も構えた





 「早く終わらせないと狂がきてしまいますしも起きてしまいます…
  さっさと済ませてしまいましょうか…」









  

  









 「京…四郎…」


  

 『いつか全てを話すから…それまで僕のこと…信じてくれる?』

 
  
  また 

  あなたに会えるなんて

  思ってもみなかった

  どうして 

  あんなことを言ったのかは 

  分からないけれど

  あなたがそう言うのなら私は信じるよ





 「どうやら、心の奥底に沈み込んでうまく狂をごまかしてたみたいだな」


  やれやれ という風には溜め息をつく


 「狂はどうなったの?」

 「狂四郎の体の中でハデに暴れてるだろ」

 「その様子がリアルに想像できるね、でも…今京四郎が信長と会っちゃうのはマズイんじゃない?」

 「まあ確かに、今の信長の肉体に魂を移したのは他ならぬ京四郎だからな」

 「……」

 「狂の躯でもう一度蘇る…これが信長の目的だ」





  壬生一族―…

  この国の歴史を影から動かしている謎の一族

  道教を祖とする陰陽道 

  古代エジプトから発生した錬金術

  世界中のありとあらゆる呪術・医学を掌握している

  彼らなら 人の魂や肉体を自在に操ることなどたやすい






 「でも…京四郎はもうそんなことしないと思うよ」

  
 『…ボクはすでに壬生一族を捨てた身…二度と一族の業を使うつもりはありません』


  狂の躯に自分の魂を移せと言う信長に 京四郎は静かに断る



 「壬生の力を使って再び信長を復活させようというのなら」


 『―ボクにはやらなきゃならない大事なことがあるんです…
  だから…今はもう愛と平和の薬売り壬生京四郎なんですよ…』


 「あんなに悲しい目はしないでしょう?」


 『もう二度と人を殺めたくないんです…』



   


  な ん て 悲 し い 目 を す る の …









 「…どうやらキサマはとんだフヌケになってしまったようだな…
  まあ、よい…キサマでなくともほかの壬生の者にでもやらせるわ…」

 「……」

 「―ならば京四郎…お前がオレのためにできることはただ一つ…
  狂ともどもこの場で死んでしまうがいい!!」


   信長は京四郎に向かって一気に刀を降り下ろした






 「京四郎!!!」











  

 「ぐ…ぐぐぐ…」


  しかし 

  京四郎は難無く攻撃を指で受け止める




  
 「京四郎…キサマ…なめおって…!!ふざけるなァァァ!!」

 「……」

   
  信長の闘気が一気に膨れ上がった




 「天魔・骸手…!!!」







  
 「バカなヤツ、そんなことしたって」




  





 「どうしても引いて頂けないのですか?」


  いつのまにか京四郎は背後に回り 

  刀を信長の首元につけていた







 「お前が京四郎に勝てるわけないだろう?」


  はそう言って 静かに笑う







  




 「今さら何をフザケたことを…狂の躯さえ手に入ればオレは再び完全なる魔王とした復活できる―…
  さすればオレに逆らいしすべての者を三途の川へと送ってくれるわ…!!」


  ニヤリと笑う信長
  
  その笑い方に 寒気がする



 「―キサマも…キサマも…キサマも…キサマも―そう、キサマもだ京四郎…!!」

 
  一人一人 確認していくように指をさしていく





 「すべての天!すべての地!!すべての人!!!この世のありとあらゆるモノがオレのモノよ!!
  未来見の巫女・朔夜を犬のようにかしずかせ、キサマが大事に思っている舞姫・
  我が者にしてくれる!!」







  


  ザシュッ









 「キ、キサマァァァ!!」



   急に信長から血が流れる

   あまりにも太刀が早くて見えなかった

   斬ったのは二回か三回…いや五回か…





 「…許せない、何があっても―…絶対に…ボクの罪は僕が償う―…」


  コ ノ ツ ミ ハ ケ ッ シ テ キ エ ハ シ ナ イ ケ レ ド 

  

 「あなたが…朔夜や他の人達、そしてを傷つけるというのなら」


  キ ミ ガ シ ン ジ テ ク レ ル ノ ナ ラ 





 「ボクは再び鬼神となろう―…!!!」


  ソ レ ガ ボ ク ノ チ カ ラ ト ナ ル  



  そう言って京四郎は刀を構えた













 「京四郎…」



  触れているガラスが冷たかった

  すぐにでもあそこへ行って 助けたい
  
  あなたに 触れたい 





 「起こして、あげようか」

  
  の言葉に体がピクンと揺れる


 「え…?」

 「早く目を覚まして、アイツらの所に行きたいんだろ?」

   
  頭をポンポンと優しく叩かれる



 「うん、行きたい…!みんなを助けたい!」

 「分かった 起こしてやるよ…でもその前に…」


  ニッコリと笑う

  な、何か寒気がするのは気のせいかしら?



 「面白いことを思い付いたんだよね 俺」

 「面白いこと、ですか?」

 「そう、だから…」


  は私の前に手をかざす



 「もう少し眠っていてくれる?」



  急に眠気が襲う

  何も 考えられなく なった




 「ど…して…」



  
  は崩れる落ちるを支えた





 「悪いな、、お前の身体少し借りるよ」



  を静かに横たわらせながら 面白そうに笑う

  その顔は何かを企んでいる顔


  

 





  さあ 懐かしい顔触れに 会いに行こうか
















  ただ 君さえ 信じてくれれば



  どんなに罪を背負っていても

  どんなに人殺しと呼ばれても
   


  君が 信じてくれれば

  君が いてくれれば



  
  それだけで ボクは 救われるんだ








  




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