千の風 第14話

 



  また

  会えるなんて

  思っても見なかった















 
                  



                            千 の 風 


  



  














 「は…?」

 「何その声は!!人が真剣に話してるのに!!今私が言ったことちゃんと聞いてた!?」

 
  意味が分からない というように間抜けな声を出すとその態度に怒る

  さっきまでのシリアスな雰囲気はどこにもない




 「いや…聞いてた…けど…え?」

 「だから今度は私がを自由にするって言ってるの!」




 『もし真実を知ったら…は実の兄と鬼の子のどちらを選ぶのかな?』



  時人の言葉が頭をよぎる



 「は狂ではなくて俺を選んだのか…?」


  あんなに狂を助けたいと言っていたのに?



 「まさか」


  はにこっと微笑む



 「両方選ぶに決まってるでしょ?どっちも大切なんだから」


  さも当たり前という風に俺の妹は言う


 
 「自由になるときは二人一緒でしょ?」



  ああ どうして




 「私達は二人で一人なんだから」




  どうしてこんなに俺の妹は強いのだろう




 「絶対に助けるから」




  助けるつもりが 逆に俺が助けられている



 
 「ああ…」




  きっと いつか




 「二人で自由になろう」




  二人で あの大空へ飛ぼう

 
   
  二人なら きっと飛べるから






   







  その後 しばらく二人で座って話をした

  最後に会ってから 

  何日も経っていたから

  例え夢の中でも 

  お互いのぬくもりを確かめるように

  二人で手を握りながら






 「俺の中に水龍がある限り、吹雪はお前を連れ戻そうとはしないはずだ」

 
  『水龍』という言葉を聞いては僅かに顔を顰める

  俺はそれに気付いて 繋いでいない方の手での頭をポンポンと叩く


 「でももし信長の一件が終わったら、信長が死んだら」




 「アイツはお前を連れ戻すために必ず動き出す、そして狂を殺そうとするだろうな」



  の言葉に体が震えた

  握っている手から汗が滲む



 「何で…」

 「壬生はたぶん、狂の体に信長の魂を入れて復活させようとしてんだよ」

 「復…活って信長…を?」

 「そ、 歴史を元に戻そうとしてるんだ…次の支配者になるはずだった信長が狂に倒され
  この国の歴史…いや 壬生一族の支配が崩れてしまったから」

 「……」

 「アイツ等の考えていることは只一つ」


  二つの視線が交差する





 「壬生に逆らい己の手で国を動かしている家康を殺す…いや 壬生に逆らいし者共をすべて抹殺し
  歴史の表に出てこの世を直接支配しようとすることだ」

 「な…嘘でしょ!?」



  信じられない

  この国の歴史は 

  この国の人々が作るものなのに

  まだ自分達が神だと思っているの


 「そんなこと…絶対にさせないんだから…!!」


   
  握っている手が震えた

  がそれを優しく握り返す



 「そんな未来…もし夢で見たらどうしよう…」

 「変えるために動けば良、今お前がやってることだろ?」

 「でも…」

 「お前らしくもない…いつもの勢いはどこへいったんだ?」






 「自分が一番と思う方向に進めば良い、そうすれば自然と未来は変わるさ」


   

  そう言ってはニカッと笑う



 「うん…そうだね…」


  その言葉に私も安心して笑い返した





 「モッサリが支配する国なんて嫌だろ?」

 「うん、国が滅びる」



   
  ひどい言われよう…



 「それに…」







 『信長よ…おめえの時代は終わったんだよ…お前にも聞かせてやるよ…神風の清饗を―…』

 「「!?」」



  話を続けようとしたの言葉を 誰かの声が遮った

  この声は…






   


  視 界 が 変 わ る


  ガ ラ ス の 向 こ う に 見 え る の は 何 ?   






 「どうやら俺達が話をしてる間に随分と時間が経ったみたいだな…」




  そ こ で 見 た も の は 





 「狂…!!」



  の手を離して 

  急いで立ち上がる



  信長と刀を交えている狂

  どれくらい闘ったのだろうか

  着物は破れ 

  体のあちこちに傷がある

   


  そして少し離れた場所に 紅虎 幸村 サスケ 阿国 早矢がいる

  彼らも誰かと 

  いや 

  十二神将と闘ったのか

  傷がひどい

  





 「は、早く起きなきゃ…!!狂が死んじゃう!!夢の通りになっちゃよ…!!」

 「大丈夫…狂は死なない、アイツが死なせないさ」

 「アイツ…?」

 「そう、が良く知ってるヤツ」



  落ち着いた声で淡々と話す

  その漆黒の瞳には何が写っているの?

  










 「フ…半死人のくせになかなかやるではないか狂よ…」

 「…ざけんな まだまだこれからだぜ…」




  信長も狂もお互いに息が上がっていた

  それでも刀を交えるのを止めようとしないのは 侍の性なのか





 「よっしゃあ!!いけるで!狂はんの方がおしてるわ!!」

 『違うね…鬼眼の方が分が悪くなってきてる』


  目を細めて早矢は言う


 「な、何やて…!?」

 「早矢の言う通りだよ…ほんの少しずつだけどだけどね…本当の躯じゃないせいなのか…
  狂さんの反応速度に微妙なズレが出始めている…普通じゃ問題にもならないズレだけど
  このレベルの闘いだとそれが命とりになる…しかも…」

 『鬼眼の制限時間はとっくに過ぎてる…もういつ倒れてもおかしくないね…』

 「そ、そんなアホな!?狂はん!!」



  狂の刀を持つ腕が震えている

  息も切れ 

  立っているのもやっとの状態









 「狂!!」



  手を伸ばしてみても 

  分かるのはガラスの感触だけ

  ああ 

  いつもと同じだ

  まるで 

  見るだけと言わんばかりの未来のよう 

  触れられるくらい近くにいるのに 

  触れられない





 「っ!!このままじゃ…!!」

 「……」

 「…?」


  は黙ったまま答えない
















 「どうした…もう体が動かんか」


  信長が一歩一歩狂に近付いて行く
 
  その顔は笑っていた














 「っ…!!駄目っ!!やめて…」

   
  早く目を覚まさなきゃいけないのに 

  体が動かない

  このままだと
  
  夢のとおりになってしまう

  未来を帰るために ここに来たのに

  狂を護るために ここに来たのに
 



 「狂っ……!!」



  
  も う  誰 も 死 な せ な い っ て 決 め た の に






  






  




 「なめんじゃ…ねぇよ…ブッ殺してやる…」

   
  もう狂の体が限界を超えていた





  



  ―助 け て あ げ よ う か ?




    


   ド ク ン 


 
   


   今のは…



  
  ― カ タ ナ の 使 い 方 を   教 え て あ げ よ う 



  


  今の声は―…!!



 「て…てめぇ…!!」








 「!?」

 「…狂さん?何を言って…―…」



  狂の頬から 

  血が滴り落ちた






 「オオオオオオオオオオオオオ」




  まるで 

  獣の吠声





 「な、何だ!?今の…アイツどうしちまったんだ!?」

 『……』

 「ま、まさか…」


  狂の獣のような叫び声に 

  その場にいた全員の動きが止まる



 「狂…キサマ…すべての闘気が消え失せておる…今のは断末魔の悲鳴だというのか…?
  みじめなものだな―…キサマのことは忌わしき記憶の一つとして覚えておいてやろう―…」


  信長が刀をかまえた











 「狂…!?」

 「大丈夫だよ 

 「え…?」


  どうして は そんなに 落ち着いて いられるの?












 「さらば鬼眼の狂よ―!!」


  信長の刀が振り下ろされる




 

 「や、やめてええええええ!」


  コ ロ サ ナ イ デ … !



   




  キィィィィン 




  


 「ぐっ!!」


  紅い光が輝いたかと思うと 

  次の瞬間には信長は肩からバッサリと斬られていた




 「何ィ!?」

  


  今のは斬りにいったのか…?

  紅い光が光り輝いただけのように見えたのに…
   
  今までの比ではない

  なんてスピードなんだろう

  こんな剣をふるえるのは…!!

   
  幸村の顔から 汗が流れる



  こ ん な 剣 を ふ る え る の は 


 「…狂さん…!?」


  幸村は恐る恐る 狂に話し掛ける




 「…違いますよ―…」

 「え…?」


  この声は


  
 「このままにしておいたら…本当に死んでしまいそうだったから―…そろそろ潮時かな…と思って―」


  この優しい声は



 「それに…の声が聞こえたから…」



  あなたなのですか?





  

 「…そんな―…君は…まさか―…」

 「…鬼眼の狂―…―いや…」


  顔を上げた狂の眼は 

  紅ではなく黒い瞳




  



  


 「やっと出て来きたな」

  面白そうには笑う


  
  頭の中が真っ白だ


  まさか また あなたに 会えるなんて







  
 「壬生…京四郎…か―…」










  


 「京四郎…」


  小さく呟いた声が 風にとけた














  また

  会えるなんて

  思ってもみなかった

   

  その瞳が

  その姿が

  その声が


  すべて懐かしい 
  
   









  



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