千の風 第11話
咄嗟に目を瞑ったら
誰かに抱きしめられた気がした
誰かに護られた気がした
一体誰に?
千 の 風
パチパチと火が残っている中
煙がすっと消えていく
「…え?何ともない?」
シンダラの攻撃で咄嗟に目を瞑ることしかできなかった
唯一できたことと言えば
狂に危険だと叫んだことだけ
ではどうして自分は無傷?
背中に腕の感触
目の前には広い胸
「…狂!!」
まさか…
自分の身を挺して護ってくれたの?
「シンダラよ…相変わらず無気味な野郎だな…」
姿を現した狂には数カ所の火傷があった
そしてその腕の中にはがしっかりと抱きしめられている
の咄嗟の一言で狂は身を挺して護ったのだ
「あなたほどではありませんよ…―どうやらビカラが随分とお世話になったようで…
次は―私がお相手しましょうか?」
「よけいな気遣いは無用だぜ…二人いっぺんにかかってきな、
おめぇら二人―…まとめてブッ殺してやるからよ…!!」
「ちょっと狂…」
「…面白い冗談ですね―…かつて天下の千人斬り『鬼眼の狂』と互角に闘い、
その人智を超えた力は単身で一国滅ぼすとさえ謳われた我ら十二神将…
それを…二人同時に相手するとおっしゃるんですか?」
「いや面白くも何ともないって…ねえ…狂…!!」
「ああ…遠慮はいらねぇ…二人まとめてかかってこいや」
「話を聞け!!」
バシッ
は狂の頭を扇で叩く
「てめぇ……何しやがる…!!」
頭を押さえ 紅い瞳で狂はギロッと睨んだ
「話を全然聞いてないから実力行使したの!!さっきから何度も言ってるでしょ!?
今は体を休めろって言ってるの!!二人同時に相手する?遠慮はいらない?
バカじゃないの?十二神将なんだから只ですむわけないじゃない!
そんな感情だけで強くなったってしょうがないでしょう!?
そんなに闘いたいのなら自分の躯を手に入れてからしなさい!!」
「「「「……」」」」
『鬼眼にあそこまで言えるのはだけだろうね』
千人斬りの異名を持つ漢の頭を扇で叩く
ある意味最強だろう
「分かりましたよ…」
静かに様子を見ていたシンダラが口を開く
「え…?」
「狂さんの躯が封印されている地下氷城の正確な場所がね…」
「「「「!!」」」」
その言葉に全員が驚いた
「な…」
狂 の 躯 の 場 所 が 見 つ か っ た ?
ゴスッ
「…はけよ…さっさとオレの躯の場所をはきやがれ!じゃねぇとバラバラに斬り殺すぞ?」
その言葉を聞くと同時に狂はシンダラを殴り飛ばした
「そうはいきません、 躯の正確な場所が分かった以上、早急に回収しなくてはいけませんから」
切れた口から出る血を手で拭いながらシンダラは言う
…先を越された
はぎりっと唇を噛んだ
躯が見つかった以上
信長は絶対に動き出す
あのまま地下氷城に行けば良かった?
早矢がいたから
戻らなくても良かった?
でも
「死ぬかもしれない」って聞いて
頭が真っ白になった
顔から血の気がひいた
気がついたら走り出してた
もう人が
大事な人が
死ぬのは見たくないの
「…じゃあてめぇの体に…聞いてやるぜ!!」
狂は再びシンダラに刀を向けて走り出す
「…それともう一つ…」
まったく動じないシンダラ
狂の首の周りからピシッっという小さい音がしたかと思うと
「あまり動かない方がいいですよ?」
それはいきなり光出し
炎が燃え上がった
「なに!?」
「狂!!」
避ける度に小さい音がし 炎が現れる
「く…!!」
「…あなたの周りにはすでに炎の胞子をまいておきました動けば動く程発火していき―…」
気がつけば
周りはすでに火の海
「あなたは炎に囲まれてしまうんですよ」
逃げ場がどこにもない
「…あのバカ!!」
「狂…!!」
「―ったく頭に血ィのぼらせるからヤバくなるんだよ」
サスケは狂を助けようと走り出す
「!?サスケ!!後ろ!!」
「ようやく隙み〜けvv」
が叫ぶと同時にサスケの背後からアンテラが姿を現す
ヤバい…間に合わない!!
ガキィィィィン
「ぐ…!!」
サスケは咄嗟に剣玉で攻撃を防ぐ
しかし
アンテラのあまりの力に下駄が地面に食い込む
「きゃはv」
可愛く笑いながら 空いているもう一本の手で武器をアンテラは降り下ろした
「まず…!!」
ゴギッ
鈍い音と共にサスケは殴り飛ばされた
「サスケ!!」
「行かせませんよ」
サスケの元に走り寄ろうとするの前にシンダラが立ちはだかる
「シンダラ…!!」
「、あなたには我々と一緒に来て頂きます」
「は?それで素直に行くとでも思ってるの?」
「…そう言うと思いました、だから…」
「ちょっと放してよ!!」
ゆやの叫び声
それを聞いては顔が強張る
視線の先にはゆやの手をがっしり掴んでいるアンテラの姿
「ゆや!!」
「…もし一緒に来て下さらないのでしたら、今すぐここでこの女性を殺します」
無表情で淡々と話すシンダラに冷や汗が流れた
「…狙いは何?」
「あなたですよ、、あなたがいなくなれば『鬼眼の狂』もヘタに動くことができなくなりますから」
「…っ!ならゆやは関係ないじゃない!!」
「彼女はあなたが余計なことをしないように人質になってもらいます、
それに彼女もあなた方にとっては弱点にはかわりありません」
なんて卑怯なヤツ…!
はシンダラを睨み付けた
私だけならいい
でも
関係のない人を巻き込むのは許せない…!!
『、こんなヤツら僕が…』
「ダメ…ゆやが人質に取られてる」
風を起こそうとする早矢を手で制す
「私が一緒に行けばゆやには手を出さない?約束してくれる?」
「…約束しましょう」
『!!』
「早矢、あなたは狂を護りなさい、いいわね?」
『……っ』
「大丈夫だから、心配しないで」
その言葉を聞いてはシンダラに向かって歩き出す
「ゆやの命は保証する、それが条件よ」
「約束は守ります、だから…」
ドスッ
「な、何す…っ!?」
「あなたには少し眠っていてもらいますよ」
シンダラに腹を殴られ意識を手放す
そしてそれを支え
シンダラはを抱きかかえた
ドゴォォォォォン
「「「!?」」」
「きゃあ!!」
大きな音をたてて
早矢の周りの地面が砕ける
『シンダラ…』
その可愛らしい姿からは想像できない程の低い声
『に何かしてみなよ…』
凄まじい程の
殺気
闘気
怒り
『命令に背いてでも…お前らを殺しにいくよ?』
「…心得ました」
シンダラは静かに答えた
風が静かに治まる
早矢の銀色の髪が 揺れた
きっと
こんなにも
怒りが込み上げてくるのは
何もできない自分自身
の気持ちが分かっているから
ここにいて鬼眼を護らなければならない
このもどかしさ
ザシュッ
狂は自分を囲んでいた炎を刀で消し
難無く自由になっていた
「フン…炎で囲むだけのつまんねぇ技じゃあオレは止めらんねぇぜ、シンダラ…」
「止めるつもりなど最初からないですよ」
「へえ…じゃあどうするつもり…」
頭上から聞こえてきた声に狂は上を見上げる
そして
眼を見開いた
「き、狂―」
そこにはビカラ シンダラ アンテラの三人が木の上から下を見下ろしていた
アンテラはゆやの腕を後ろからしっかりと掴んでいる
そして
シンダラの腕には
が抱きかかえられていた
ゆやは必死に放れようと動いているが
は目を瞑ったまま動かない
「てめぇら…に何をした…!?」
「何もしていませんよ、ただ…少し眠って頂いただけです
あなたの今までの行動を見ていると、を人質にとった場合、非常に有効であると
判断しました…今あなたに邪魔されるわけにはいかないのでね
それにこの女性もあなた方にとっては弱点であることにはかわらないので連れていきます
もし今後…あなたが我々の邪魔をした場合…」
「彼女達の命の保証はないと思って下さい…」
「……!」
「それでは…躯を奪われるのを指をくわえて待ってなさい…」
シンダラがマントを翻えす
「狂ォォォォォー!!」
ゆやの叫び声が樹海に響いたとき
そこには
誰もいなかった
いつも
護られてばかり
いつも
迷惑をかけてばかり
あなたを護るためにここにきたのに
これじゃ自分が何をしにきたのか分からない
自分が情けなくて涙が出る
離れていても
私にできることがあるかな?
どうか
私が
戻ってくるまで
死なないで
TOP BACK NEXT