千の風 第18話




  あなたが 無事で 良かった



















   



  
 







                             千 の 風



























  それは一瞬だった

  一瞬で二人はお互いに一撃をくらわせた



  どちらが勝利したのか分らない

  ただ 風だけが ゆっくりと二人の髪を揺らす  



  しかし




  先に膝をついたのは狂だった



 「狂ォォォ!!」


  ゆやが狂に向かって走り出す

   

   
 「幾年」

 「え…」




  風が 誰かの声を 運んだ

  その声に反応するゆや





 「幾年幾月…刻が流れようとも、天か地か…この世がオレを必要とするかぎり、オレは必ず蘇る―…」


   
  言葉を発したのは信長だった

  まるで 最後の言葉であるかの ように 




 「必ず…な」


 
  そして




  鈍い音がして




  信長の 首が 飛んだ



  ゴトッと大きな音をたてて地面に落ちる

  首を失った体は 崩れ落ちた








 「き、狂が…勝った―…き、狂!!だ、大丈夫…!?」


  傷を心配して駆け寄ってくるゆやを 狂は静かに手で制す


 「…え!?」



  視線を向けると 
  
  シンダラがゆっくりと狂に近付いていた



  そう

  信長が死んでも 

  まだ彼らが

  十二神将が残っている






 「……」

 「…シンダラさん―…」

 「…今度はてめえらがまとめてかかってくるのか?フン…相手になってやんぜ…!!」


  狂がニヤリと笑う




  

  バシッ    





 「ふざけんな」



  は持っていた薄紅色の扇で 狂の頭を思いっきり叩く

  痛そうな音が樹海に響いた

  その行動に 全員が固まる








 「て…てめえ…!!何しやがる!!」

   
  狂は頭を押えて を睨む

  しかし それに怯むことなくは睨み返す



 「相手になる?バカなこと言うんじゃねぇ、立つのもやっとのくせに何言ってんだよ」

 「さん…?」



  いつもと 口調が 違う…?

  何か口が悪くなっているのは気のせいかしら…!?




 「シンダラ、お前等にはまだやるべきことが残ってるだろ、早くそのモノを持って帰れ」


  そう言いながら は狂の前に立つ



  庇うように

  護るように




 「……」

 「それに…ここで死んだら、お前のアイツに対する忠義が果たせなくなるだろう?」
 
 「!?」


  の言葉にシンダラは目を見開く

 


  どうして あなたが 知っている?



  いつもと違う

  その口調 

  その行動  

  そのすべてを知っているかのような言葉


    
 「あなたは…まさか…」



  そこまで言って シンダラは言葉を飲み込む

  そして 鋭い視線で狂を見た



 「狂…憶えておいてください…これが終わりではありません―これが…無限地獄の始まりなのですから」

 「―え…」



 「無限地獄なんて始まらないよ」



  の凛とした声が 響く

  その漆黒の瞳には 強い意志が見える





 「その未来は必ず変えてみせるから」






 「……」


  シンダラは何も言わずに マントを翻す

  そしてそのまま アンテラと共に 姿を消した
  










 「はん!!どうしてヤツ等を見逃したんや!?」


  紅虎がに詰め寄る
   


 「…じゃあ聞くけど、その傷でヤツ等に勝てると思う?」

 「!?」
 
 「この場にいる全員が深い傷を負ってる…その状態でまともに闘えると思ってんの?」

 「そ、それは…」

 「闘うのならまずはその傷を治してからにした方が得策と思うけどね」



  淡々と静かに言う

  しかしその眼差しは鋭い

 
  いつもと違うの様子に 紅虎は目を丸くする




 「おい…」


  その様子を見て 狂はに近付く






 「何でソイツの体の中に入ってんだよ、





  …?

  どこかで 聞いたことが あるような…





  『私に兄貴がいるのは知ってるよね?っていうんだけど…』
 



  「って確か…さんのお兄さん…」

  
   ゆやが言うと にっこりと笑って



 「あ、知ってるんだ?でもこうして話すのは初めてだよね 
  今は妹の体を使わせてもらってるんだけど中身は俺、だよ」




  と ん で も な い こ と を 言 っ た 



  目が点になる



  体はさん でも 中身は…







  ・・・・・・・・・








 「え−−−−−−−−−−−−−−−−−!?」

 「うわー新鮮な反応だねっ」

 『(はあ)』


  …いや はにっこりと笑う




 「何やってんだよ」

 「ただ様子を見に来ただけ、心配しなくてもすぐに戻るって」

 「久しぶりだねーv」

 「おう、幸村もな」

 「はんの…お兄はん!?」

 「そう、よろしくな紅虎」

 「あんた強そう」

 「強いよ、今度試してみる?」

 「、さん…」

 「阿国さん久しぶり、でも今はあまり喋らない方がいいよ、今度また、ね?」

 「あ、あのっ…!!」


  ゆやの声に 全員の視線が集る



 「あのとき…シンダラとアンテラを助けてくれたのは、さん、ですよね…!?」




  タ ス ケ テ ア ゲ ヨ ウ カ ?



  その声が聞こえたと同時に風が吹いた

  その時に 感じたものは

  さんの雰囲気とよく似ている



  暖かく

  優しい



  そんな 感じ 





 「さあ、どうだろうね?」


   



  さんは笑うだけで 何も答えてはくれなかった

  でもその表情は





  とても 優しかった













 「そろそろ、自分の体に戻らないとな…狂」


  は狂を引っ張って 自分の口を耳に近付け

  
  そっと囁いた




 「信長が死んだ今、壬生は必ず動き出す、お前を殺すために、前の躯を探すために」





  「そして」






 「を、連れ戻すために」




  狂の体がピクッと揺れる




 「だから」








 「         」





  狂の目が見開く

  はそれを見て 静かに笑った

  そして 

  目を閉じた







 「さん…?」

 「何してんだ…?」

 「たぶん、起こそうとしてるんだよ」





 「深い眠りについている、を」
















 


  真っ暗で 何も見えない

  体が 動かせない

  手足の 感覚がない






  ここは  夢の世界

  深い

  深い 

  眠りの世界

  








   ― 

  私を 呼ぶのは 誰?





   ― … 俺だよ

  その声は




  ― そう、もう起きても大丈夫だよ
 
  何やってたの 今まで




  ― 別に?ただ、様子を見に行ってただけ
   
   嫌がらせの間違いじゃないの…?




  ― まさか、まあとにかく、目を覚ましてごらん

   目を覚ますって…どうやって?




  ―簡単だろ、いつもどうやって起きてる?

   まず…目を開けて…














  光が 見えた気がした

  風が 吹いた気がした






    












 「さん!!」

 「…え?」


  そっと目を開けてみる

  そこで 

  見えたものは

  心配そうにこちらを見ている みんな






  


 「良かった…無事だったんだね、


  幸村が 私の頭を優しく撫でる



 「いきなり倒れてびっくりしたよ〜狂さんが支えてくれなかったら危なかったよ?」

 「え…?」



  そう言われてみれば

  背中には腕の感触 が する

  少し見上げてみれば



  紅い瞳がこちらを見ていた




 「狂…?」




  私はそっと手を伸ばし 狂の頬に触れる




  暖かい

  生きている   
  
   



 「生きてる…」



  未来は変わった?



 「だから言ったろ」






 「勝つのは オレだ」


  狂が 笑う




 「うん…!!」



  私は両手を首に回して 狂に抱き着いた



  トクン トクン と 心臓の音がする

  生きていると 分かる


  あなたの 暖かさ ぬくもりが 伝わる





  涙が 溢れた






  みんなが優しく 微笑んだ






  私が動いたことで 未来は変わったのかな?









  あなたが 無事で 良かった






















  


 「…っ」

 「…?大丈夫?」


  そっと目を開けてみると

  金色の瞳がこちらを見ていた



 「ほたる…」

 「ビックリした…部屋に入ったらが倒れてるんだもん」



  心配した とほたるは言う


  どれくらい眠っていたのだろう

  頭がボーッと する

  軽い目眩が する

   
  力を使い過ぎたが…




 「?ホントに平気?」

 「ん…大丈夫」



  でも 収穫はあったと 思う

  やっぱり夢で見るのと現実で見るのとじゃ違うな




  それに





 「それよりほたる お前何しにきたんだ?」

 「えーと、死合ってもらおうと思って」

 「か え れ !」



  それに 狂にを頼んだから 少しは安心できる





  『の側にいてやってくれ』





  




  を頼んだよ





















  未来は変わったのかな

  あなたが

  みんなが

  本当に無事で良かった





  『自分が一番と思う方向に進めば良い、そうすれば自然と未来は変わるさ』




  いつでも私は 

  自分の信じる道を進もう


  鳥のように

  風のように






  私には 羽があるのだから






















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  あとがきと書いて言い訳

  樹海編はこれで終わりです
  マコラ…結局出しませんでした…(汗)
  す、すいませ…!

  次は壬生編です!私の大好きな!
  ほたるも辰伶も…あ、灯ちゃんも早く書きたいな〜