ドリーム小説

 「あ、可愛い」

 「ん?」


  ショッピング街の端で店を広げているアクセサリー屋さん

  テーブルを二つ並べてシンプルな青の布を被せて、その上に無数に散らばったシルバーアクセサリー

  手作りだろうか、ジュエリーショップで飾られている豪華な装飾の宝石よりも、こっちのシンプルなデザインの方が好きだとは思った



 「ね、一護、あのお店見てもいい?」

 「ん?あのアクセを売ってる店か?別にいいけど…」

 「やった!」

 「うぉ!?ちょ、ま、おい!引っ張るな!」



  一護の腕を引っ張って、は嬉しそうに近付いていく

  突然腕を引かれて一護は体勢を崩したけれども、そんなことは気にせずに












 「いらっしゃい」

 
  出迎えてくれたのは、柔和な笑顔がとても似合う女性だった


 「何をお求めかしら、婚約指輪?」

 「「えっ!?」

 「ダメじゃないの、彼氏さん、婚約指輪をこんな安物のシルバーアクセサリーで済ませようとしちゃ」

 「あああああの、私達そんな…!」

 「あらぁ、違うの?」


  つまらないわ、と頬に手を当てながら、女性は至極残念そうに呟いた

  つまらないってお姉さん!何か違うよ!と叫びそうになるのを寸前で堪えておく

  一護をチラっと横目で見ると、耳まで真っ赤になってしまっていて、こっちまで恥ずかしくなってきてしまった



 「じゃあ彼女に送るプレゼント?優しいのねー彼氏さんは」

 「だからっ、お、俺達はそんな関係じゃ…!」

 「照れちゃって!可愛いのねー」

  

  顔を真っ赤にして否定しても説得力はないだろう、当然、照れているようにしか見えなくて

  にこにこと笑いながらお姉さんはそれじゃあこれなんかどうかしら?と座っていた椅子から立ち上がって、向いにいた私達の方へやってきた

  どうやら一護とは完璧に彼女の中で彼氏彼女の関係だと認識されてしまったらしい



 「この指輪なんかどうかしら?」

 「あ、可愛いー…」




  女性が指を指した先にはいくつもの指輪があった

  それは厚みが少し薄めのリングで、天然石をワンポイントとした本当にシンプルなデザインだった


 「彼女さんにはそうねー…これが似合いそうね」



  差し出されたのはアメジストの石が埋め込まれている指輪で

  光に当たるとキラキラと輝くその紫水晶に魅了されずにはいられなかった

  でもどうして紫?今は外出するということでカラ−コンタクトをしているから瞳の色が紫だとは分からないはずなのに、と首を傾げる



 「世間は紫を欲求不満や高慢を表す色に思いがちだけども、本当はとても高貴な色なのよ」


 
  昔は最高位の人しか身につけることができなかったの、と女性は後に続けて言った



 「紫は気高さや神秘の象徴でもあるの、それに芸術的さ、忍耐力、思いやりという言葉の意味をも関係しているわ、あとは慈悲の心も表すわね」

 「紫ってそんな意味があったんですか…」

 「貴女を見て、何だかとても紫が似合うような感じがしたの…ああでも気を悪くしたらごめんなさいね」



  ゆっくり見ていってね、と女性は微笑んで、後から来た別の客の元へと姿を消した



 「…ピッタリじゃん」

 「え?」

 「紫の意味、お前にピッタリじゃん」


  一護はひょいっとアメジストの指輪に手を翳した

 
 「…そう、かな」

  
  紫色に私は良いイメージも印象も、そして思い出もない

  幼い頃から気味悪がれて、恐れられて、好きになることなどできるわけがないのだ

  だから私は昔からこの色が大嫌いだった



 「…俺さ、」

 「ん?」

 「この色好きだわ」


 
  一護はにかっと笑っての頭を乱暴に撫でた

  いつもは止めてよ!と抗議の言葉を叫ぶけれど、言うことが出来なくて

  

 「…ありがとう」


  

  初めて紫色が好きだと思った、自分の瞳の色に少しだけ、嬉しさを感じた




















 「…ほ、本当にいいの?」

 「いいからもらっとけ」
 


  結局何も買わずにその場を後にして歩くこと数分、突然一護は歩みを止めて、先に行っててくれ!と今来た道を逆戻りして走って行ってしまった

  急なことで呼び戻すことも出来ずに、呆然とその場に立ち尽くすことしかできなかった

  一護が去って、数分後、ようやく戻ってきた彼の手には、アメジストの指輪が、しっかりと握られていて、驚きのあまり言葉出なかったのは言うまでもないこと



 「紫は魔除けの意味があるって聞いたことあるし、お前すぐに無茶するからちょうどいいかと思ったんだよ」

 
  あと、治癒へ向かう色なんだってよ、と一護は言った


  ねえ、一護、それは表向きだって分かってる

  本当は、私がずっとその指輪を見ていたことに気付いていたんだよね? 誰よりも優しい、貴方だから



 「……」

 「?」

 「ねえ、一護…」



  嬉しくて嬉しくて涙が出そうになるのを必死に堪える

  気付かれないように、知られないように、震えそうになる声を抑えながら言葉を紡ぐ



 「…ありがとう、大切にするね」

 
  在り来りの一言

  伝えたい言葉はたくさんあるのに、嬉し過ぎて、今はこれしか言えない私をどうか許して









  おう、と照れたように差し出された手を握る
 
  の右手の薬指にはアメジストの指輪がいつまでもキラキラと輝いていた












  何 よ り  い き み の や さ し さ