ふわり、ふわり。身体が宙を浮いているかのような不思議な感覚を感じた。しかし、それはまったく嫌ではなくて、逆に気持ちがいいと思った。あまりにも優しすぎるこの感覚と耳が痛いほどの静寂が合わさり、眠気を誘う。閉じている瞳を開けることすら億劫で、このまま流れに身を任せて眠りについてしまおうかと思った。ああ前にも自分はこれを体験したことがある、は頭の中でぼんやりと思った。


「・・・・おい、子娘、いつまでそうしているつもりだ?」
「・・・だ、れ?」
「誰?まだ寝惚けているのかバカ娘、オレだ、――――だ、」
「・・・・?」


うっすらと目を開けた。するとそこには以前もここと同じ場所で出会った男。 分かるか?オレだ、―――だ。 男は自分の名前を名乗ったようだった。しかし・・・・聞き取ることができず、は首を傾げる。


「・・・・そうか、やはりお前にはまだオレの声が届かないのか、」


呆れたように、大袈裟に溜め息を吐きながら、男はを見て。そして一言。


「ならば、分からせてやるまで、」
「えッ・・・!」


男が消えた。いや、消えたのではない。常人では見えぬ早さで移動したのだ。現に男が今自分の目の前にいる。それは本当に突然のことで。頭で理解したときにはもうすでに遅く、男はの目の前で今にも拳を振り落とそうとしていた。 避けなけば! 思うよりも先に身体が動いて、右に避ける。避けるのと同時に男が振り落とした拳が大きな音をたてて地に沈んだ。そこは今まさに自分が座っていた場所で。たらり、と背筋に冷たい汗が流れるのをは感じた。しかし、更に自身を凍えさせたのは、拳を振り落としたことによって出来た亀裂から黒い闇がうごめくように発生し、深い穴を作ったことだった。穴から溢れた闇は消えることなく周りの空間を飲み込んでいく。・・・・まるで、がいるこの空間を無にしようとしているかのように。


「・・・・なッ・・!」
「ほらほらー、早くしないとこの闇に取り込まれるぜ?」


男はこの状況に対して何ともも思わないのか。にやり、と面白そうに笑みを浮かべた。


「・・・・・ 助かりたかったら、オレに勝ってみな」
「ちょ、ちょ、ちょ、待ッ!!!!!!」


待って。その言葉すら聞いてもらえず、男は笑みを浮かべたまま、もう一度拳を振り上げた。 避けろ! 拳が当たる寸前のところで今度は左に避けた。しかし、左には先程男が空けた穴から無数の闇が蠢いていて、今にもを飲み込もうと大きく口を開けていた。は穴にぶつかる寸でのところで身体を捻り、態勢を変えて地に転がり落ちる。


「あ、あぶな・・!!!」
「ほー・・・なかなかやるじゃんか、」
「あ、あなた一体何考えてるのよ!!」
「・・・言っただろう?闘いの仕方を教えてやるってな、」



脳内に蘇る。甘い甘い響き。あの時の声色と目の前にいる男の台詞が重なる。そして余程間抜けな顔をしていたのか、男は可笑しそうに顔を歪めて言った。








まずはレッスン1クリア。










だから話を聞けってば!