002  il gran giorno

最 後 の 審 判 の 日









ああ、当たり前だけれども傷が痛い、とは思った。これは、ちょっと深く切ってしまったからだろうか。まさかカッターでここまで血が出るとは予想外だった。まあ、利き手じゃないだけましかな。なんてぼうっとしながら保健室へ向かっていると、向こうから覚束ない足取りでふらふらと向かってくる男子生徒が見えた。・・・うわ、なんかすっごく具合悪そう。大丈夫なのかな?あれ。は眉間に皺を寄せる。顔面蒼白で、今にも倒れそうな様子に自分よりも彼の方が保健室へ行った方がいいんじゃないかと思った。
・・・しかしそれにしても見かけない生徒だ、とは思う。こんな子いたかな?と立ち止まって、その男子生徒をじっと見ていると、ふ、と目が 合 っ た。



「あ、」
「・・・ ねえ、」
「え?」
「・・・ この匂い 、あんたの?」
「え?匂いって、何の、」
「・・ 美味しそう、」
「はい?」



「あんた、うまそうな、匂いがする」



大丈夫か、この人。と思ったのも束の間。勢い良く腕を掴まれた。 痛い! 抗議の声を出したが腕を掴む彼の手の強さは増すばかりで。傷口を押さえていた腕が放されて、赤い血が指先をつたう。たらり、と流れる血を恍惚とした表情で見たあと、何を思ったのか、その男子は。


「・・・・な!」


あろうことか口に含んだのだ。
巧妙な舌の動きで傷口を抉り。は痛い!と悲鳴を上げる。傷口が痛いと分かったのか、男子はゆっくりと指を放した。しかし、そこからまた溢れ出す血をゆっくりと見たあと、男子は手をつたっている血を沿うように舐め上げる。そして手首まで舐め上げ、指と指の間を丁寧にねっとりと舐め上げた。


「・・・っ、やめ!」
「あまい、」


視点の合わない目で、の指を舐め続ける男子の目は赤く光っていた。だめだ、このままだと。このままだとどうなる?分からない。分からないが、この男、危険だ。頭の中を警鐘が鳴り響く。そうにかして逃げなければ!よし!突き飛ばそう!が空いている方の腕に力を入れた、その時。


「はい、そこまで。」
「・・・っ!!!いたっ!!!!!」


チョップ!男子生徒の頭に強烈な手刀が入った。



「なーんかよからぬ台詞が聴こえると思ったら、お前か、リウ」



やりすぎ。そうやって呆れたような顔を浮かべてそこにいたのは。



「シャバック!!」


シャバックと呼ばれた青年。