ドリー夢小説




  最近 思うことがある

















 



                            め 事
























 「だから大丈夫ですってば!」

 「そんな顔色で言われても説得力がありませんよ、さん」

 「でも、私だけ大人しく邸で寝ているなんて嫌なんです!」

 「だから僕が残るって言っているじゃないですか」

 「あー…もっと嫌というか信用できないというか」

 「酷い言われようですね…そんなにこの間の続きをして欲しいのですか?」

 「わぁ!弁慶さんが一緒にいてくれると安心できるなぁ!」

 「…棒読みですよ、さん」





  最近になって妹のと弁慶が一緒にいるところをよく見かけることがある

  決まってが弁慶に突っかかっている場面が多い

  負けず嫌いな妹だからいつも余裕の笑顔でさらっと受け流す彼が燗に障るのだろう

  仲が良いのか悪いのか

  少し微妙なところである

  まあ見ていてあきないのだが

  でもこんなことを言うと問答無用で妹の蹴りが飛んできそうだから黙っていることにしよう















 「、」

 「何」



  部屋に入ればわずかに頬をふくらました妹が俺と同じ青い瞳でこちらを見ていた

  壁にもたれかかって足を抱えながら座っているその姿に俺は溜め息をつく




 「そう拗ねるなって」

 「…だって」

 「また倒れたらどうすんだよ、それこそ望美と譲が取り乱して大騒ぎになるだろ?」

 「それも見てみたいかも」

 「…

 「…だって悔しいんだもの」      

 「あ?何だって」   

 「何でもないっ」



  そう言っては顔を膝にくっつけて俯いてしまった

  黙ってしまったところを見るとどうやら話す気はないらしい

  俺は再び溜め息をついて妹と視線をあわせるために近くに寄ってしゃがみこんだ



 
 「ホラ、もう一回言ってみ?」

 「ヤダ」

 「笑わないから」

 「嘘」

 「ちゃんは自分のお兄さんを信用してないのかなー?」

 「いひゃいいひゃい!」

 

  
  の俯いている顔を無理矢理挙げさせて頬を引っ張る

  あ、けっこう面白い




 「笑わないから言ってみな?」

 「…絶対?」

 「絶対」

 
  
  は疑いの眼差し一瞬俺に向けた後 渋々といった表情で話し出した

  そこまでお前は俺のことを信用してないのかよ…?






 「…悔しいの」

 「何が?」

 「…あの人に振り回されてるのが悔しいの」 

 「…は?」

 「いつもそう、人のことを散々振り回して…惑わして…その反応をみて楽しんでるくせに、私が辛いときにはいつも一番最初に気付いてくれて
  手を差し伸べてくれて…落ち着くまで側にいてくれるのよ?それを心のどこかで嬉しいと思っている自分にすごく腹が立つし、悔しいの!」





  分かる?と睨まれながら言われても返答に困ってしまう

  でも顔が本当に悔しそうに顔を歪ませているからその話が真実なのだとは分かった

  悔しい でも 嬉しい

  この矛盾した思い

  その正体を本人は分かっているのだろうか




  がここまで言う相手は一人しかいない
  













 「…将臣君?」

  











  落ち着いた声がやけに部屋に響いた 
 
  振り向けば 薬湯を乗せた盆を持ちながら今話題の中心にいた人物が立っていた 

  そいつの姿を確認するや否や は顔をしかめる





 「まだ邸にいたのですか?九郎が将臣君がいないと叫んでいましたよ」

 「ああ、悪い、今行くところだ」

 「ヤダ、将臣!行かないで!」

 「…弁慶がいてくれるんだから何も心配ないだろ?」

 「いや、いることが自体が問題なんだって!」

 「…さん、それは本人を前にして言うことですか?」




  自分の気持ちに気付いていない妹には本当に呆れ果てる

  そして思っていることと反対のことを言ってしまうところにも

  ――負けず嫌いな性格だから認めたくない部分も少しは入っているのかもしれないけれども

  




 「…いい加減、自分の気持ちに正直になれ」

 「っ!」





  耳もとでに聞こえるぐらいの大きさで囁けば 妹の頬がぱっと紅く染まった

  何だ 自分でも薄々気付いてるんじゃねえか













 「…あんたも、をあまりからかうな」

 

  立ち上がって今度は弁慶にしか聞こえない程の大きさで囁けば 一瞬目を見開いた後 弁慶は微笑んだ




 「反応が面白くて、つい苛めたくなってしまうんですよ」

 「その余裕さがを余計に煽ってることぐらい気付いてるんだろ?」

 「もちろんですよ、でも必死に言い返してくる姿が可愛いいものだから、こちらもついむきになって答えてしまうんですよね」

 「まあ、気持ちは分からなくもねえけど」

 「でしょう?それに」












 「気になる相手程苛めたくなると、よく言うではありませんか」
















  熊野水軍でもあり八葉でもあるあの男と同じ笑顔で弁慶はそれはもう綺麗に微笑んだ
 
  その台詞に不覚にも絶句してしまう自分がいた





  つまり こういうことなのだろうか

  お互いがお互いを思いあっているのに どちらも素直になれずに どうしようもなく相手に喧嘩を売ってそして買ってしまうと

  







 「う、薬湯ですか…」

 「飲めないのなら口移しで飲ませて差し上げましょうか?」

 「けっこうです!」

 「おや、それは残念ですね」






  いや違うな それはむしろの方だ
  

  弁慶はちゃんと己の心に気付いているのではないだろうか

  自分がをどう思っているかを確信しているのではないだろうか

  そしてが自分の気持ちに素直になるのを待っているのではないだろうか




  ――反応が面白いからついちょっかいを出してしまうとあんたは言ったけれども






  俺には 僕を本気にさせた報いだ と言っているようにしか聞こえない

   















 「…ま、お互いに頑張れ」


  そう将臣が呟いたことを 二人は知らない











 
  妹が他のやつのものになるのは正直悔しいけれど でもそれが妹の幸せになるのならと思うと気持ちが軽くなる

  ああでも弟が黙っていないな あれは本当にに関しては過保護だから

  どうやってなだめようか 今から言う言葉でも考えておこうか





   そして





  これから彼らがどうやって発展していくのか 見守っていくとでもしようか

  お互いが持っている秘め事がどうやってなくなっていくのか 














  見守っていくとでもしようか






















 「あ、でも弁慶が義弟になるのだけは勘弁かも…」













 


 (将臣は絶対に妹思いだと思う…!)