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「お帰りなさい、さん」 「・・・た、ただいま、弁慶さん、」 彼の笑顔を見て寒気がするのは私たちだけだろうか。なんだろうこの威圧感は!怖い。はっきり言って怖い。柔和な笑顔を浮かべているのに、目がまったく笑っていない。笑顔だけでこの迫力とは一体どういうことか!と望美が思った。助けを求めるように隣の源氏軍総大将の顔をちらりと見やれば、顔を真っ青にして固まってしまっていた。・・・使えねえ! 「さん、朝に僕が言ったことを覚えていますか?」 「え、ええと…」 「ふふ、僕はちゃんと言いましたよね?今日一日は邸で大人しくしているように、と」 ええ、確かに私も聞きましたとも。 ちゃんは臨月まであと少し。彼女の身体には新たな一つの命が宿っている。彼女の旦那さんからも、兄弟からも、他の八葉からも、絶対安静を言い渡されているこの時期。それに加えて「星の一族」の血を濃く受け継いでしまったちゃんは、その力ゆえにあまり身体が丈夫な方ではないものだから。弁慶さんがちゃんに対して過保護になってしまうのは仕方のないこと。しかし、それを知ってか知らずか。ちゃんはよく邸からこっそりと抜け出す癖がある。前も、弁慶さんが薬草を取りに行っている間にこっそりと抜け出し、後で皆から大目玉をくらったことは割と記憶に新しい出来事。そんなことがあったというのに。ちゃんはだって暇なんだものの一言。・・・本当にちゃんて大物だよなあ、とつくづく思う。 「薬湯を持って部屋に入ったら君の姿が見えなくて、心臓が止まるかと思いましたよ」 「・・・だって、ずっと家にいると、身体が訛ってしまうんだもの、」 「気持ちはわかりますが・・・もう君一人の身体ではないんですよ」 「それは、そうだけど・・・でも何もせずにじっとしているだけなんて退屈なの!」 「・・・四六時中、僕が見ていないと駄目ですかねえ、まあ僕としては一向に構わないんですが、」 「ええええ・・・!」 「でも、そうしたとして、君が大人しくなるとは思えませんし、」 「う、返す言葉もございません・・・」 「なので、二人で決まり事を作りませんか?」 「・・・決まりごと?」 「はい、今後外出をするときは必ず僕を連れて行くということ」 「!!」 「もう邸でじっとしろとは言いませんから・・・せめて僕を連れ立ってくれませんか、そうしたら僕も安心できますから」 「・・・弁慶さんも一緒だったらいいの?」 「・・・不本意ですけどね、」 弁慶さんは諦めにも似た苦笑いを一つ。分かりましたね、。と、まるで親が子どもをあやすように。言い聞かせるように。弁慶は至極柔らかな声色で呟いた。そして、そっとちゃんの頭を撫でた。ちゃんが嬉しそうに頬をうっすらと染めてはにかむ。ああもう、結局弁慶さんはちゃんには甘いんだから。二人の様子を静観していた望美と九郎はお互いに顔を見合わせ、こっそり溜め息を吐いた。鼻歌を歌いながら一人で散歩するちゃんを見つけて、大慌てでここまで連行してきた自分と九郎さん。ふらふらと抜け出すちゃんに(まったく妊婦という実感はあるの!)(あまりないんだろうな・・・)今日という今日こそは弁慶さんに叱ってもらおうと家に連れ戻したのはいいけれど、甘かったなあ、と苦笑い。 「弁慶さん、ちゃん!」 「望美、」 「ああお二人とも、御迷惑をおかけしてしまったようで、すみませんでした」 「・・・まったくだ、 一人で歩くを見て・・・心臓が止まるかと思ったぞ」 「あは、はー・・・おっしゃる通りで、」 「もう!弁慶さんってばちゃんには本当に甘いんだから、」 「自分でもそう思っているんですけど・・・しゅんとした顔を見てしまったら、ね?」 「気持ちは分かりますけどー・・・だってちゃん可愛いから、」 「でしょう?」 「いや、関係ない、関係ないよそれ!」 「まったくだ!それとこれとは話が別だろう!!!」 「五月蝿いですよ、九郎、少し静かにして下さい、腹の子が驚いてしまうでしょう」 「・・・・・・・・・・」 「・・・ええと、何だかごめん、九郎さん」 きらきらひかる 「・・・頼むから大人しくしていてくれ・・・疲れる、」 「・・・善処しまーす、」 |