きらきらひかる










籠に入れられた色とりどりの野菜。茄子にきゅうりにとまとに青菜。どれもとても美味しそうでついつい<手が伸びてしまった。気が付けば腕にかかる籠の重みに驚く。あれほど重いものは持つなと言われているのに。本当に君は、と呆れたように笑う彼の顔が脳裏に浮かんで、ふふっと顔を綻ばす。けれど、その後にきっときっちりとお説教をくらうんだろうなあ、とは苦笑いをした。今日は内緒の外出。いつもは荷物運びのためにヒノエや敦盛さんが一緒に来てくれるけれど、たまには一人で市場へ出かけたいときがある。それが主婦ってものでしょう?ここまできたら、と無駄に意気込んで魚も買っていこうかと止めていた足を動かしたその時。


!?」


突如呼ばれた名前。それはどことなく焦燥感を帯びていて、それでいて怒気も微かに感じる声色。この声に聞き覚えが無いというのは嘘。それはすんなりと耳に入ってくる馴染みのあるもので、は後ろを振り返る。するとそこには案の定、顔いっぱいに怒りの色を浮かべた自分の兄弟子がいて。九郎さん、と名前を口に出す前に、馬鹿者!と罵声の言葉が頭に降り掛かってきた。


「お前…!こんな所で何をしている!?」
「……… く、九郎さん、」
「馬鹿!あれだけ重い荷を持つなと言っただろう!」


に何かあったら顔向けが出来ないじゃないか、あいつにもーーーーー その子にも。
<視線を逸らさず、一つ一つ丁寧に言葉を投げかける。でも、と言い訳を言おうものなら厳しい視線が返ってきた。相手が自分の意を分かってくれるまで真剣に相手と向かい合う生真面目な性格は今も健在なようで、は苦笑いを一つ。素直にごめんなさい、と謝れば応えの代わりに大きな掌で頭をふわりと優しく撫でられて、何だか照れくさくなった。


「送ろう、」
「え、いいのに」
「馬鹿、このままお前を見過ごして帰ったら、あいつに何を言われるか分からん」


ひょい、と軽々と野菜が入った籠を取り上げて九郎さんは顔をしかめながら言う。毎日毎日、お前と腹の赤子について惚けられるんだ、とげんなりした表情を浮かべるその顔に、源氏軍の総大将の面影などまったくなくて、は声を上げて笑った。







きらきらひかる






だって愛されているもの、と囁けば、血が通い過ぎてしまったかのように、顔を真っ赤にさせた九郎さんが目に入って、それがまた可愛くて可笑しくて、笑ってしまうのは数秒後のお話。