ドリーム小説



 「私、九郎さんには絶対に負けないから」

 「…は?」

 
  顔を合わせた途端に、自分を見る眼差しを鋭くさせたは、びしっと指を指し出しながら

  大分身長差があるのにも関わらず、精一杯鋭い目線で自分を見上げてきたその姿に

  はて、何か彼女と勝負事をしていたかと、首を傾げれば

  それが彼女の勘に触ったのか、「そうやって余裕綽々でいると今に痛い目に合いますからね!」と
 
  まるで捨て台詞とも取れるそれを吐いて、颯爽とその場を去って行った


 「九郎、」


  の言動がまったく理解できずに呆然としていると

  後ろから困ったように自分を呼ぶ声色が聴こえてきたものだから振り返ってみれば

  やはり声から感じ取ったと通りに、少し困惑気味な表情を浮かべている弁慶がいて

  しかし、それでもそこはかとなくどこか嬉しさを滲ませているものだから

  さっきのといい弁慶といい、一体こいつらに何があったのかと九郎は眉間に皺を寄せた

  が怒る=弁慶が関わっている、はすでに自分の頭の中で成立している公式だ


 「…お前、」


  に何をした?と九郎は口では言わず、目線で訴えて


 「前から今日の午後にさんと市街を散策する予定だったんですよ」

 「…それがどうした?」

 「鶴岡八幡宮へ行こうと誘ってきたのは君でしょう、九郎」

 「…だから?」

 「それで僕が九郎に取られたと思ったのでしょうね、さんは」

 「な!?」

 
  まったく、さんは本当に可愛い女性ですね、とクスクスと可笑しそうに弁慶は笑い、逆に九郎は頭に手を置いてはあ、と重い溜め息を吐いた

  つまることを言えば、が自分に宣戦布告にも似たものをした理由が分かったわけなのだが、何ともそれが馬鹿らしく思えて

  (しかし、女が男に嫉妬するのはどうかと九郎は軽い頭痛を感じた)

  鶴岡八幡宮へ誘ったのは確かだが、それはあの迷宮をもう一度この目で見たかっただけのことで

  弁慶に言ったのは、たまたま自分の傍にいたからというただそれだけの理由のことであったから尚更のこと


 「…弁慶、今すぐの誤解を解いてきてくれ」


  当たられるのはまっぴらごめんだ、と言わんばかりに九郎な苦虫を潰したような顔をして


 「もちろんそのつもりですよ」


  もしかしたら、迷宮の謎を解くよりも、さんの誤解を解く方が難しいかもしれないと思いつつ

  弁慶はどうやって彼女の機嫌を直そうかと、まるで戦略を練っている軍師の表情を浮かべながら、考えを巡らせた

  まずは、会ってすぐに、キスの一つでもおくろうか、と






  エグゼクティブレディ