ドリーム小説


 「今…何て言った?弁慶…」

 「…だから、すべての戦いが終わったらさんを元の世界へ帰すと言ったんです」


  みるみると険しくなる九郎の顔、今にも怒鳴り声をあげそうな雰囲気にも関わらず、弁慶は少しも動じることなく真摯な態度で受け止めた

  こいつは自分が何を言っているのか分かっているのか、と九郎は再度問い返そうとしたが、彼が、弁慶ががあまりにも真直ぐな瞳で自分を見ているものだから、慌てて口を噤んだ


 「…納得のいかないような顔をしていますね」

 「…っ!当たり前だろう!あんなにお前達は…」

 「九郎、」


  それ以上言うことは許さない、と諌めるように弁慶は笑う


 「…ねえ、九郎、君は知っていますか?」


  この世界に来たばかりの彼女は、戦の経験もましてや剣の握り方すら知らなかったのに

  自分に課せられている役割のこと力のことも何も知らない、笑顔がよく似合う可愛らしい少女であったのに


  ――あったはずだったの、に


 「…僕が、染めてしまった」


  彼女は今では「星の一族」としての自覚が目覚め、彼女独自の力とも言える「白き力」によって神子を献身的に支えている

  それどころか、彼女の剣の腕前はあのリズ先生が認める程の腕前にまで成長し、戦場ではその実力を遺憾なく発揮して

  そう、彼女は人の肉や骨を断つ感触を、噎せ返るような血の匂いを、戦という死と隣り合わせな環境を知ってしまった

  

  染めてしまったのは

  巻き込んでしまったのは
 
  力を貸してくれと、彼女に請うた、のは、 紛れもなく、自分



  「さんという、白で純粋な穢れなき色を…赤、という罪と咎で濡れた血の色に変えてしまったのは――僕です」

  「弁慶!それは…!」

  「―…だから、さんを元の世界へと帰します」


 
  もう覚悟を決めた、君を傷付けても守ると

  その代わりに、君の痛みを、僕が代わりに抱きましょう、君の苦しみを、この胸に抱きましょう



  「――さんが、僕のものにならないように」



  さあ、帰りなさい、元いた場所へと

  いつでも願っているから、君が幸せになれるようにと





  もうすぐのさようなら




  けれど、ぜめて残夢で逢えたらと望む僕は、なんて愚か者なんだろう