ドリーム小説
「な、な、なななななな…」
梶原邸の私室に招き入れた途端に、彼女は青い瞳を大きく見開かせ、部屋の中を指差しながら、わなわなと震えた
「ふふ、驚いていますね」
「これ、が、弁慶さんの私室…!?」
「凄いでしょう?いい加減にしろ、と九郎には言われてはいるのですが、どれも貴重な書物や物ばかりで簡単には捨てられないんですよね」
だから物が溢れかえってしまうんです、と眉を下げながら申し訳なさそうに微笑んだ
けれど、本当に本心で言っているのかというような少し疑いの眼差しでさんは僕を見るものだから、失礼ですね、と言って頭をぽんと叩いた
「でも、これじゃあ足の踏み場もないじゃないですか!」
「まぁ確かに…」
「せめて整理ぐらいしたらどうです?こんなに散らかっていてはお嫁さんを貰ってもすぐに逃げられてしまいますよ!」
彼女はどこからか浅葱色の紐を取り出して、髪を手で解かしながら一つにきゅっと縛りながら言った
どうやら片付ける気でいるらしく
「――ふ、あははは…っ」
「ちょ、ちょっと、弁慶さん?何が可笑しいんですか?」
「ふ、ああ、すみません、き、君があまりにも面白いことを言うものだから、つい笑ってしまいました」
それこそ九郎が聞いたら、弁慶に嫁!?と先程の君のように瞳をこれでもかというくらいに大きく見開いて驚くようなことを君が言うから
だって僕が妻を娶るだなんて考えられないでしょう?
兄にはもういい歳なのだから、いい加減に身を固めたらどうかと散々言われるけれども、生憎と、その気がまったくない上にそれ以前に自分には
やるべきことがごまんとあるものだから、縁のない話だと思っていたことも事実であることですし
「…別にそんなに笑わなくても」
「すみません、さん」
「知りません、もう一生独身でいても私は知りませんからね!」
「ああ、それならきっと大丈夫ですよ」
何を根拠に言っているか分からない、という風に彼女の顔は歪んだ
だって、ね?
僕の心にすんなりと入ってきた上に、散々掻き乱しておきながらそのまま知らん顔をして僕の元を去っていくだなんて許さないから
こちらとしても納得はできませんし、ちゃんと責任を取ってもらわないと困りますし、ね
それに、逃げられると言われても、妻を娶るとしたら頭に浮かぶのは彼女ただ一人だけなのだから、それ以前の問題ではありませんか
「――さんが、貰ってくれるでしょう?」
――ああ、だから、君と言う名の祝福を、僕に
君しかいらない
(な、何だこいつら!)