殿は私の妹かもしれない。

私にはひとり、生き別れた妹がいる。それがもしかしたら、殿かもしれない。クロデキルドさんの台詞に、一瞬頭が真っ白になった。誰が?誰の妹だって?確かに。には両親がいない。ほんの昔、「の両親は?」と彼女のすべてが知りたくて、好奇心一つでそう尋ねたことがあった。そのときほど、オレは自分の楽天的な性格を呪ったことはない。「私はラジム村長に拾われた子なの、」 と 「拾われる以前の記憶がないの、」「自分の名前しか、覚えていなかったの」と泣きそうな笑顔で告げる姿に、無我夢中で抱きしめたのを覚えている。あくまでも一つの可能性にすぎない、と彼女は言った。クロデキルドさんの妹さんがいなくなった時期と、がシトロ村に現れた時期がどうやら一致するということ。に幼い頃の記憶がないということと。何より、クロデキルドさんの妹が『』という名前だということから、確かに一つの可能性を示唆しているが。


、」
「うん?」
「・・・えっと、あの、さ」


は相変わらず笑っていた。でもまったく不安に思っていないといったらきっと嘘になる。自分にはまったく身に覚えのないことなのに。知らない誰かが自分のことを知っているのだ。恐いわけ、ない。不安なわけ、ない。こんな時、どんな言葉をかけたらいいのだろう?どうすればの中から不安は取り除かれるのだろう?考えても考えても分からなくて。自分の無力さを呪うしかなかった。「リウ、」 ふと、身体に感じる温かさ。背中に回されるの腕。そこから微かに震えているのが伝わってきて、応えるようにの身体をそっと抱きしめた。


「・・・ ねえ、リウ」
「・・・ ん?」
「私、は、シトロ村のだよ、」
「・・・うん、」
「・・・それ以外の何者でもないの」
「そんなの当たり前だ、」
「・・・ ねえリウ、」
「・・・ うん?」


私がどこの誰であっても、私のことを好きでいてくれる?
そんなのこと、応えるまでもないことで。お前はシトロ村ので。オレの好きなに代わりはない。そう意味をこめて遠慮なく強く抱きしめたら「痛いよ、リウ、」と少し苦しそうな声が聴こえたけれど、そんなこと気にしない。


「・・・リウ、」
「んー?」
「ありがとう、」









泣きそうな笑顔に、をした。

(それすらも、綺麗だったんだ)