どんなに足掻いても もう、手後れ










つまらない、と思った。


「… 分かりやすすぎる… 」
「なにが?」


眉間に皺を寄せながら、顔を歪めるを見て、ロイは首を傾げた。あんなに自分を毛嫌いしていたのに、今では自然と隣で歩くことが多くなった、彼。昔より、大分丸くなったかも。自分の影武者をはちらり、と横目で見やる。三節根を肩でトン、トン、と軽やかにリズムを作る、その余裕さが勘に触って、「別に、」と出来るだけ低い声色でそう呟けば、ロイの口角がぴく、と歪んだ気がした。本当に彼はずぐに顔に出るな、とはくふ、と笑う。 「ねえ、ロイ」 すっかりへそを曲げてしまった影武者に声をかければ、彼は嫌そうな顔をしながらも、こちらに視線をよこした。


「好きになってくれる人だけを、好きになれたらいいのに ね」


そして、俯いた。ロイのひゅう、と息を飲む音が静かに空気を通して伝わる。本当に、どうして自分じゃ駄目なんだろう、と思う。けれど、それはきっと愚問。どうして、君だけが目に入ってしまうんだろう、と。何度も諦めようとして。何度も嫌いになろうとしたけれど。浮かぶのは自嘲だけ。だから。


「あーもう、ムカツク」
「……………………ほんっと、アンタって可愛くねーのな、」
「好きな子ほど、苛めたくなる性格だから、」
「……… 質悪りぃ」
「褒め言葉として受け取っておくよ、」


呆れたように溜め息を吐きながら 「…それで、何がつまらないって?」 とロイが言うものだから、もう言葉にすることすら億劫で、ただ、指先だけで応えた。その先には、真っ白になった医務室のシーツを鼻歌を歌いながら干すの姿。「…が、なに?」とまったくこちらの意図が分かっていないロイに痺れを切らして、 「の視線の先に、誰がいる?」 と大袈裟に溜め息を吐きながら応える。「 視線の、さき… 」とロイの呟きとが紡いでいたメロディーが消えたのは同時で。それを合図に彼女に俯いていた顔を上げて、彼女に視線を移せば。ああ、見るんじゃなかった、と後悔した。彼女の先にはしっかりと、自分ではない他の男の姿があって。遠くで「  ! 」と自分ではない他の誰かが名前が紡ぐのを耳に傾けながら。「 ああ、本当につまらない 」とはもう一度呟いた。









だけども逃れられない