|
「ねえ、ヴィルヘルム、ちょっと相談したいことがあるんだけど」 にこりと王族に相応しい気品に満ち溢れた笑みを浮かべるファレナの王子。この笑みを含んだ顔をしたときのは要注意だ、と彼の傍らで事の成りゆきを見守っているリオンはそう思った。この笑みを浮かべたときの王子はよからぬ事を企んでいる合図。彼は自分が面白いと思ったことには一切手を抜かな<い性格だということをリオンは思い出して、顔を引きつらせた。そしてああ今度は一体誰が犠牲になるのだろう、と心の中で溜め息を吐かずにはいられなかった。嫌な予感がするのは単なる思い過ごしであればいいのに。 「実はね、ヴィルヘルムの部隊に衛生兵として所属させたい人物がいるんだけど」 嬉しそうに微笑む王子にリオンは背筋をつたう冷たい汗を必死で無視しようと試みた。彼の意図がはっきりと分かったリオンは 「お、王子!」 と非難の声色をぶつけてみたが、いつもの柔和な笑顔でさらりとかわされてしまった。 ごめんなさいごめんなさい。やはり私には王子を止めることなんて無理なようです。 ああ、こんなに楽しそうな王子を止めることが出来るでしょうか、いいえ出来ません!(きっと今の王子にはどんな言葉も耳には入らないだろうから) 「っていう子を、傭兵旅団専門の衛生兵として、入隊させようと思うんだ」 ああやっぱり、とリオンはこれから訪れるの毎日を想像して、心の中で涙を流さずにはいられなかった。ファレナの王子に大変気に入られてしまった哀れな少女の所属先は、本人の意志に関係なく決定された。 「明日から、楽しくなりそうだね、リオン」 「…そう思っているのは王子だけです」 まさかこの判断が王子の勝手な趣味思考だということは、決して言うまいとリオンは心の中で固く決心せずにはいられなかった。 |