悪いけど、負けないよ?



 「ねえ、、賭けをしない?」

 
  頬杖をつきながらこちらを見る少年はこの古城の主でもあり、また、ファレナ女王国の王子という肩書きを持っていて

  彼の柔らかな微笑みは将に王族に相応しいそれであるけれども、お互いのことを熟知している間柄でもある自分から見れば何かを企んでいる表情にしか見えなくて

  彼――に対して身構えてしまうのは仕方のないこと


 「――どうして身構えるの?」

 「それは王子が、」

 「、名前」

 「…が何かを企んでるような顔をするから、でしょ」


  昔は、とそれはもう当たり前のように呼んでいたけども、主従関係となった今では、王子、と呼ぶことが日常になっている

  しかし、はそれが気に入らないらしく、すぐに名前で呼べと訂正してくる、眉間に大きな皺を寄せながら、私の名前を強く呼んで


 「失礼だなぁ、暇だからカードゲームでもしようって言ってるだけじゃない」

 「ただカードで楽しむだけなら賭けなんてやらなくてもいいでしょ?」

 「分かってないなぁ、は、賭けをした方がやりがいがあるし、盛り上がるでしょう」


  もうの中では決定事項らしく、それを感じ取ったは何を言っても無駄であると、諦めの溜め息を吐いた


 
 「それで?何を賭けるの?」

 「そうだなぁ…負けた方が勝った方にキスするっていうのはどう?」

 「――その心は?」

 「最近からキスしてくれないから寂しいんですー」



  ただそれだけのために!と喉元まで出かけた言葉を飲み込んだ、言ってしまったらの機嫌を損ねてしまうことは必至だ、そして自分の身が危なくなることも

  

 「じゃあ私が勝ったら?」

 「僕からキスしてあげるよ」

 「…それって勝っても負けてもが得するだけじゃない」
 
 「そう?気のせいだよ」


  
  さあ、始めようかとは楽しそうに鼻唄を歌いながらどこから取り出したのか、最初から持っていたのか、カードを意気揚々ときりだした

  私に拒否権はないの、と非難の声を上げたくなったけども、何だかんだ言って、こうしてと一緒にいられることに幸福感を感じている自分に

  元から否定をする権利などないのだと感じ、苦笑いを一つした






  
  長い夜は始まったばかり、さあ、勝者は誰?
  
  





   恋愛は勝負でなく駆け引き、或いは芸術である