コツコツと自分の足音が暗闇の中で静かに響き渡るのを聞きながらはふと窓の外を見遣る

  外はまるでバケツをひっくり返したかのような雨が降り注ぎ、空には雲と雲との間を光が走っていた、いわゆる雷だ

  空が光ってから音が聞こえるまでにかなりの時間差があることから、遠くで鳴っているらしい、この辺りに落ちる心配はなさそうだ、とは思った

  がこれから向かおうとしている場所は、自分の幼馴染みの部屋

  雷を大の苦手とする彼女は今頃、ベットの上で丸くなり、毛布を頭から被って震えていることだろう

  その姿を思い浮かべて苦笑いをする、しかし、部屋に向かう足は自然と速くなり
 
  ひんやりとした夜気には身震いし、自分用に持っていた毛布を強く握った


 「、入るよ」

 
  雷が鳴る日はいつしか一緒に過ごすということが定例となっていたため、最早ノックなど必要なく

  ゆっくりとドアノブを回して部屋の中に入ると、暗闇の中から今にも泣き出しそうな、なんとも言えない、情けない声が聞こえた


 「…!」


  腰を抜かしたかのようにベットの上に座り込み、毛布を頭から被っているの姿は端からみると滑稽そのもの

  毎度のこととはいえ笑い出しそうになるのを必死に堪える、それが例え彼女にとって死活問題だったとしても笑ってはいけない

  ここでからかうものなら、実家に帰らせて頂きます!といった勢いで一人でトランへと帰り、数日間口も聞いてくれないといったおまけが付くことだろう

  それだけは避けたいなぁとはこっそりと思いながら、ゆっくりと足を動かしての隣へと腰掛けた

  ギシ、とベットの軋む音が暗闇の中で響く


 「の雷嫌いは筋金入りだね、本当に」

 「嫌いなものは嫌いなの!」


  は涙を浮かべながらの腰に抱き着いた

  僅かに震えていることが肌を通して伝わり、は目を細める

  安心させるようにゆっくりと背中を撫で、そして掌で彼女の耳を塞いだ、雷の音が聞こえぬように

  こうすると落ち着くところは、昔とちっとも変わってはいない

  
 「…落ち着いた?」

 「う、ん…た、多分」

 「大丈夫、すぐに恐くなくなるよ」

 「え?」


  眉を顰めながら顔を上げると、 耳に微かに誰かが廊下をバタバタと走る音が聞こえた

  それも徐々に大きくなり、真直ぐに自分達のいる部屋に近付いてきていて

  首を傾げた直後、ドアが大きな音をたてて開いた



 「ー!!!」

 「こんな夜中に大声をあげるな、馬鹿者」


  息を切らせてたシーナとルックが慌ただしく部屋に入ってきた

  あまりにも突然のことに目を丸くさせていると、シーナはの隣にいるを視界に入れた途端に、悔しそうに顔を歪める


 「に先を越された…!」

 「当たり前だろ?シーナ」

 「クソー!!」

 「、平気?」

 「え?へ、平気って何が…?」


   がっくりと肩を落とし、床に手を付いて落ち込むシーナをルックは呆れたように横目で見ながらの元へ近付いた


 「雷に決まってるでしょ」


  何を言ってるの、と言わんばかりにルックは言う


 「ああやっぱりみんなここにいた」


  ルックの台詞に答えあぐねていると、今度はのんびりとした口調の声色が聞こえてきた

  ひょっこりと姿を見せたのはこの城の主でもある

  彼の手には盆で塞がれていてその上には二つのマグカップが白い湯気をたてて乗せられていた


 「?」

 「はい、今晩は、さん」

 「案外遅かったな、

 「ホットミルクを入れていたんですよ、さん、本当はハイ・ヨーさんに部屋まで持ってきてもらおう思ったんですけど、どういうわけかシーナに止められて」

 「それはお前!爽やかな笑顔を浮かべながらトンファーで起こそうとしているのを見れば誰でもば止めるに決まってるだろうがッ!」

 「えー…ハイ・ヨーさん優しいから笑って許してくれるよ、きっと」

 「君は仲間から死人を出してもいいってわけ?」

 

  三人の言い争う声で雷の音がまったく聞こえなくなったのは良いことなのか、悪いことなのか

  取りあえず「ね、ねえ… どうして三人がここに?」と不思議に思ったことを口にしてみると、

  の台詞に意味が分からないといったような表情を三人が浮かべて

  
 「だってって雷苦手なんでしょ」

 「前にさんから聞いていたんですよ」

 「今頃怖がってるんじゃないかと思ったんだけど」

 「ルックってば素直じゃないよなぁ、はっきりと心配だったって言えばいいのに」

 「煩い!」

 「俺一人でもいいって言ったんだけどさ〜」

 「君が言ったら何をしでかすか分からないだろ!」

 
  再びぎゃあぎゃあと騒ぎ出す三人にぽかんとしていると、の大きな掌が頭を撫でて

  彼は苦笑いをしていたけども、その声色は明らかに面白がっていることは明らかだった


 「…つまり、お前が心配で仕方ないってことだな」


  ――――もちろん、俺も含めて


  の声にはすぐには反応出来なかったけども、段々と頬が紅くなり、何とも言えないようなくすぐったい気持ちになって

  そんな彼女を見ては微笑み、頬に一つキスをした









  

ほうっておけないんだよ、本当だよ










 「ところで

 「はい?」

 「どうしてマグカップが二つしかないのかな?」

 「え、どうしてって僕とさんの二人分だからですよ?」

 「………………………………」

 「何っだそれー!?オレたちの分はー!?!?」

 「本っ当いい性格してるよね、君って」