、久しぶりに二人で合わせてみないか。



たまには気分転換も必要だろう。律からの申し出にわたしは二つ返事でOKした。確かに、最近はアンサンブルの曲を引き続けていたから、違うテイストの曲を弾くのも悪くないかもしれない。



「わたしの好きな曲でもいい?」
「ああ、構わない」




それならば、と頭に思い描いたのはあの曲。深呼吸を一つして弾き始めたのは、小さい時から従兄の蓮に何度も弾いてもらった、「愛のあいさつ」 わたしが大好きな曲の一つだ。最初のワンフレーズで、ヴァイオリンがそんなわたしの気持ちを汲み取ったのか、楽しそうに響いたような気がした。程なく律が音を奏で始める。互いの音が寸分の狂いもなく重なり、絶妙のハーモニーを生み出す。 

―――うん、やっぱり律の音は安心する。

ちらりと律を見やれば優しく微笑んでくれた。律も同じ気持ちなんだということが分かって、わたしも嬉しくなる。愛らしく、楽しげに。そして歌うように。相棒のヴァイオリンの音が更に響いたような気がした。




 
 「なんっかムカつく」
 「あれ、響也、いつからそこにいたの?」
 「・・・いちゃ悪いのかよ」
 「まさか、響也がいたら久しぶりに三人で合わせたかったのにー」
 「そ、そうかよ」
 「、後半の部分だが・・」
 「あ、ねえ律、ここはもっとヴィヴラートをきかせたら綺麗だと思うんだけど」
 「ああ、俺もそう思っていたところだ、それと・・・」
 「中盤だよね?うん、ここはポルタメントの使い方をよく考えた方がいいね」
 「もそう思っていたか、」
 「うん、あと・・・って響也どうしたのその顔、」
 「・・・・熟年夫婦かあんたらは!」
 「なんでいきなり怒りだすのー・・!」
 「俺とが夫婦?そんなことありえないだろう」
 「そうだよ響也、籍も入れないで夫婦になれるわけないでしょー?」
 「あーもうほんっっっとムカつくなあんたら!」



 
  

Enjoue



 

(音が重なりあうように、心も重なりあう)








 「だからなんで怒りだすかなー・・・」
 「うるせえ!(ちっくしょう!)」